Polygon評、『Dungeons & Dragons: World of Warcraft』はD&Dに必要だった大胆な刷新と評価
Polygonは、Wizards of the Coastが発売した『Dungeons & Dragons: World of Warcraft』について、2024年のルール改訂以降、安全策を取ってきたD&Dに刺激を与える野心的な一冊だと評価しています。新しいキャラクター選択肢やモンスター、あまり活用されてこなかったサブシステムの使い方が詰め込まれている点が評価の中心です。
慎重だったD&Dに現れた野心作
Wizards of the Coastは、2024年に第5版のルールを更新して以降、手堅い展開を続けてきたとされています。2025年にリードデザイナーのJeremy CrawfordとChris PerkinsがWizardsを離れ、Critical RoleのDarrington Pressに移ってからは、新作のペースも落ちました。最近の書籍は、人気キャンペーン設定の設定やルールの更新と、既存のキャラクター選択肢の調整が中心でした。
本書はこの流れとは異なる一冊だと、原文筆者は述べています。本書は、Universes Beyondシリーズの第1弾です。このシリーズは、ライセンス作品とのコラボを多数展開してきた『Magic: The Gathering』の手法を広げたもので、同作の方針には議論もありました。『World of Warcraft』とD&Dには共通するクラスやモンスターが多い一方、22年分のゲーム展開と、アゼロスでの1万2000年に及ぶ争いを取り込む必要があり、難しい挑戦だったとしています。
高レベル帯と戦術性を重視した内容
5版の魅力は、特に低レベル帯で覚えやすく遊びやすい点にあります。一方、『World of Warcraft』は大規模なボス戦と多彩な能力が特徴のゲームです。本書もそれに合わせ、高レベル帯のプレイと、あらゆるレベルでの戦術的な戦闘に重点を置いています。
ただし、翻訳が不必要に分かりにくい部分もあるといいます。『World of Warcraft』にはレベル1から始まらない英雄クラスがありますが、本書はその用語を紹介しながら、レベル1から始めてもよいと説明しています。この表現を乗り越えれば、どのゲームでも使いたくなる充実した選択肢が得られるとのことです。
たとえばDeath Knightは、Paladinの中核能力を多く改変しています。サブクラスの枠を超え、聖なる戦士をネクロマンシーの力で戦場を支配する存在に変えます。敵を近接戦闘に引き寄せたり、霊体の騎馬で壁を突き抜けて突進したりできます。Demon HunterはRangerを大胆に作り直したもので、Warlockの力を使い、魂を集めて自身の回復や敵への攻撃に役立てます。
ボス戦の再現と高レベル帯の相性
こうした強力な能力は、『World of Warcraft』のダンジョンに住む敵に立ち向かうために必要だと原文筆者は述べています。リードデザイナーのJames Wyattのチームは、伝説的アクション、4版から5.5版で復活した重傷状態(bloodied)、『Mythic Odysseys of Theros』で導入されたミシック・アクションを組み合わせ、複数フェーズのボス戦を再現しています。多くの敵は、重傷状態になるか、ヒットポイントが0になると回復し、強力な新能力を解放します。戦いが進むほど、切迫感が増す仕組みです。
本書は、複雑な『World of Warcraft』の設定やストーリーを圧縮し、魅力的な冒険のきっかけに変える点でも手堅いと評価されています。Old Godsの腐敗、Scourgeの大群、Burning Legionの脅威に立ち向かうキャンペーン案が、あらゆるレベル向けに用意されています。なかでも高レベルのダンジョンと敵が優れているとのことです。
D&Dでは10レベルに達すると、移動をほぼ一瞬で済ませたり、多くの問題を素早く解決したりできる強力な魔法を使えるようになります。これはトールキン風ファンタジーという多くのD&Dの前提を崩します。しかし、世界中を飛び回って破滅的な脅威と戦い、居心地のよい宿に転移で戻る『World of Warcraft』の雰囲気には合っているそうです。新登場のPotion of Manaは呪文スロットを回復できるため、通常のゲームでは均衡を崩しますが、ダンジョンを突破するために連戦する前提なら成立するとしています。
サブシステムの活用と惜しい点
本書は戦闘以外でも、D&Dで十分に使われてこなかったサブシステムを強化しています。『Dungeon Master Guide』のRenown(名声)システムでは、『World of Warcraft』の多数の勢力との評判を管理し、強力な報酬を得られます。クラフトは大幅に見直され、呪文の使い手でなくても道具の習熟で魔法のアイテムを作れます。探索中の採集行動も拡張され、希少な素材を探せるようになりました。
一方で、原文筆者は本書の分量が足りないと指摘しています。Wyattのチームは、クラフトと採集をさらに掘り下げ、各アイテムの素材が特定の地域で見つかるレシピ一覧を作りたかったようだとしています。実際には多くが抽象化され、具体例が添えられているだけで、記述が分かりにくく、外部の情報に頼りすぎていると述べています。敵は丁寧に作られ個性的ですが、ダンジョン探索や戦闘地形での環境上の障害に関する記述がもう少しあれば、冒険の没入感が高まるとも述べています。
Universes Beyondへの期待
原文筆者は、『World of Warcraft』とD&Dには共通点が多く、このコラボは自然だとしています。2027年に発売予定の『Star Wars』のUniverses Beyond書籍では、そうはいかない可能性が高いとの見方です。それでも本書により、Universes Beyondが既存のファン層を狙った商売の手段にとどまらず、コアゲームには複雑すぎるとされる仕組みをデザイナーが試せる場になるのではないかと期待を示しています。『World of Warcraft』を遊んだことがなくても、特に高レベル帯でプレイヤーに挑戦を与える新しい発想を得るために、手に取る価値があるとまとめています。