TRPGの『Dread』は、ダイスの代わりにジェンガで挑戦を解決し、ホラーの緊張感を生み出す
2026年10月21日 | #ゲーム紹介 | Polygon
多くのTRPGは英雄的な冒険を主眼に置いていますが、ホラー要素を取り入れて遊び手の緊張感を保とうとする作品も少なくありません。その中でも、雰囲気とルールの組み合わせが際立っているとPolygonが紹介するのが、2006年にThe Impossible Dreamから発売された『Dread』です。ENNIE Awardを受賞した本作は、ダイスを使わず、あらゆる挑戦をジェンガで解決します。
ホラーTRPGの中での『Dread』
『Dungeons & Dragons』や『Pathfinder』には、不気味なモンスターやRavenloft、Ustalavといったホラー寄りの舞台、不穏な力を持つキャラクター向けのルールがあります。『Call of Cthulhu』や『Delta Green』では、未知のものに触れるほど正気度が削られ、キャラクターが次第に壊れていきます。『Ten Candles』は実際に明かりを減らして恐怖を演出し、『13 Omens』は進行するほどダイスロールが危険になっていきます。
こうした作品がある中でも、雰囲気とルールの結びつきでは『Dread』に並ぶものがないというのが、筆者の見方です。作者はEpidiah RavacholとNathaniel Barmoreの2人です。
難しい行動はタワーから1本引き抜いて判定する
キャラクターが燃える建物から脱出する、古い文書を翻訳するといった難しい行動をするときは、ジェンガのタワーからブロックを1本引き抜き、そっと上に載せます。最初は簡単ですが、ゲームが進むにつれて、1回引くごとにタワー全体が崩れる危険が高まっていきます。
『Dread』は1回で完結する遊び方を想定しており、生き残れないキャラクターも多く出ます。ブロックを引くときにタワーが倒れると、その行動は失敗し、そのキャラクターはゲームから退場します。斧を持った殺人鬼と戦っていたり、罠から逃げようとしていたりした場合は、そのまま死につながります。それほど危険が明確でない場面なら、恐怖で逃げ出したり、寝返ってNPCになったりすることもあります。
タワーはその後に組み直され、しばらくは引くのが簡単になって、残ったプレイヤーは一息つけます。勇敢なプレイヤーが、あえてタワーを倒して自分のキャラクターを劇的に犠牲にし、仲間の生存率を上げることもあります。
誰でもすぐ始められるキャラクター作り
ルールが極めて単純なので、ほとんど誰でもすぐに覚えられます。ルールブックには、狼男に狙われる大学のキャンプ旅行や、敵対的なエイリアンに遭遇した宇宙船の乗組員など、いくつかのホラーの設定が載っています。各シナリオにはキャラクター作成用の質問票が付いています。
この質問票は能力値ではなく、ゲーム中に起こる「厄介事」の一覧を作るためのものです。恐怖、後悔、過去のトラウマ、ほかのキャラクターとの複雑な関係を決めることで、欠点の多い複雑なキャラクターをすばやく作れます。計算も複雑な能力もないため、ホラー映画を観たことがあれば、約30分でキャラクターを用意できます。ホストが独自のシナリオや質問票を作ることもでき、プレイヤーの答え次第で多彩なホラーの冒険が生まれます。
質問票では、キャラクターの得意なことや役に立ちそうな装備も決められますが、合わないと判断すればホストが却下できます。整備士が古い車を直す、運動選手が落ちてくる瓦礫をかわすといった得意分野の行動では、タワーから引く必要がない場合もあります。より見事な成功を狙ってあえて引くこともできますが、その場合は危険を負い、グループ全体の状況も悪化します。
全員がタワーを見守る緊張感
筆者は『Dread』を何度か遊んでおり、いつも記憶に残る体験になるといいます。最初は全員が状況を探ったり、迫ってくる脅威に対抗する方法を探したりと意欲的です。しかしタワーが不安定になるにつれ、引かざるを得ない行動は慎重になります。難しい行動をとるより逃げて隠れる選択が増え、モンスターと正面から戦うことが多いほかのTRPGよりも、ホラー作品らしい雰囲気になります。
『Stranger Things』は、D&Dの戦闘でd20を振るたびに卓が固唾をのんで見守るかのように描いています。しかし実際には、1回の行動が戦況を大きく変えることはまれで、ダイスの結果はすぐに処理され、ほかのプレイヤーは次の行動の相談に気を取られがちです。これに対して『Dread』では、誰かが勇気を出して難しい引きに挑むと、全員の視線がタワーに集まります。手の震えがキャラクターの命取りになるため、神経を試されるゲームだと筆者は述べています。
英雄的な犠牲への歓声、引きがうまくいかなかったときのうめき声のほか、見事に引き抜いたプレイヤーが席に戻る途中で卓に触れてタワーを倒してしまい、皆が爆笑する場面も見たそうです。
ホラーならではのカタルシス
これらは、映画館の観客が息をのみ、画面で嫌なことが起きた瞬間にそろって悲鳴やうめき声を上げるのに似た、ホラーならではのカタルシスだと筆者は述べています。大手のTRPGはプレイヤーを怖がらせるために複雑なルールを作ってきましたが、『Dread』のシンプルな巧みさには及ばないとのことです。ぐらつくタワーからブロックをそっと引き抜く間、友人たちが息をひそめて成功か、キャラクターの死かを見守る緊張は、ダイスロールでは再現できないと筆者は結んでいます。