『Marvel’s Wolverine』の戦闘は圧倒的だが物語の着地に課題
2026年09月11日 | #レビュー | Game Informer
『Marvel’s Wolverine』は、ウルヴァリンというキャラクターの荒々しさと破壊力を、これまでにない精度でゲームに落とし込んだ作品です。高速で距離を詰め、敵を爪で切り裂き、攻撃を受けても立ち上がるローガンの姿は、まさにプレイヤーが期待するウルヴァリンそのものです。一方で、物語の後半には理解しづらい展開があり、一本道の進行も含めて、戦闘以外の部分では手放しに評価しにくい仕上がりになっています。
ウルヴァリンの戦闘を体現したアクション
本作でもっとも優れているのは、主人公の戦い方を操作感へ変換したアクションです。ローガンは単に攻撃力が高いキャラクターではなく、攻撃、回避、受け流しをつなげながら戦場を制圧していきます。敵の集団に対して手を止めずに斬り込み、攻撃をかわして反撃し、勢いを維持したまま次の標的へ向かう流れが、戦闘の基本的な気持ちよさになっています。
攻撃を重ねて生み出す勢いは、回復能力や怒りの力にも結びつきます。そのため、距離を取って安全に戦うよりも、危険を承知で攻め続けるほうが有利になる場面が多くあります。ウルヴァリンの持ち味である「傷ついても前へ進む」性質が、単なる設定ではなく、プレイヤーの判断を促すシステムとして機能しています。
ゲームを進めると追加の攻撃や能力が段階的に解禁され、敵を一気に押し切る手段が増えていきます。通常の敵を素早く処理するための技だけでなく、強敵との長い戦いを生き残るための選択肢も増えるため、序盤から終盤まで戦闘が単調になりにくい構成です。攻撃の激しさは極めて高く、対象年齢の高さを意識させる残酷な表現も含まれますが、それも含めてローガンの戦闘を成立させる要素になっています。
長年のファンが期待する特定の因縁の相手との対決も用意されています。詳細を伏せたままでも、そうしたボス戦が強烈で記憶に残るものになっていることは、本作の大きな見どころです。単に敵の体力を削るだけではなく、ウルヴァリンと相手の関係性や性質を感じさせる、作品の中でも特に印象的な戦いとして描かれています。
ローガンを取り巻く世界と物語
物語の舞台となるのは、X-MEN神話をもとにしながらも、独自の方向へ展開する世界です。少なくとも今回の物語では、プロフェッサーXやマグニートーが目立った存在として登場しません。その不在によって、ローガンを中心とした人間関係や、彼が生きる世界の力関係を比較的自由に描ける構成になっています。
登場人物同士の会話や、その関係が変化していく場面はよく作られています。声優陣の演技も力強く、ローガンを取り巻く緊張感や、物語を前へ進める荒々しい衝突を支えています。激しい戦闘の合間にキャラクターの内面へ焦点を当てる場面もあり、単なるアクションの連続にせず、ローガンが何を背負っているのかを見せようとしています。
ただし、こうした会話や人物描写の場面では、プレイヤーが展開を選ぶ余地はほとんどありません。進行は基本的に一本道で、移動する場所や会話の流れ、次に起こる出来事が細かく決められています。キャラクターのドラマに集中できる反面、自分の判断で関係性や展開を変えている感覚は薄く、戦闘時の自由度との差が目立ちます。
後半で複雑になるストーリー
物語上の問題がより明確になるのは後半です。ローガンの過去や、今後の展開につながる情報が少しずつ示されますが、そこで起こっていることや、その出来事が持つ意味を把握しにくい場面があります。原作のキャラクターや設定に長く触れてきたファンであっても、何が起きているのか、過去のどの要素が現在に影響しているのかを考え直さなければならない展開が含まれています。
ローガンの複雑な過去をあまり知らないプレイヤーにとっては、さらに理解が難しく感じられる可能性があります。謎を残して次の展開への興味を引く手法自体はありますが、本作では現在の物語を十分に完結させるより、Insomniacがこの先どこへ進もうとしているのかを示すことに意識が向いているように見える部分があります。
特に重要な人物同士の関係については、積み上げてきたものに対する決着が、期待したほど明快ではありません。物語の謎を考察する楽しさはあるものの、ひとつの作品として満足できる結論を求めるプレイヤーには、消化不良として残る可能性があります。戦闘へ早く戻りたいと感じるほどアクションが魅力的なだけに、物語の弱点がより際立つ結果にもなっています。
一本道の構成とやり込み要素
本作の冒険は、オープンワールドを自由に探索するタイプではありません。過去のスパイダーマン作品で見られたような広大な都市を移動し、好きな場所へ向かう体験を期待すると、方向性の違いに戸惑うでしょう。用意されたルートを進みながら物語と戦闘を体験する、密度の高いリニアなアクションアドベンチャーとして設計されています。
この一本道の構成には利点もあります。戦闘の勢いが失われる前に次の場面へ進み、プレイヤーが疲れを感じる前に本編を終えられるため、激しい近接戦闘が最後まで間延びしません。ウルヴァリンの戦いを長時間繰り返すうちに飽きてしまう前に結末へ到達する、適切なテンポが保たれています。
本編以外には、腕前を試せる複数のチャレンジステージが存在します。敵が次々に現れるウェーブ形式の難しいステージもあり、本編で身につけた攻撃や回避の技術を改めて試せます。さらにNew Game+では難易度を上げた状態で再プレイでき、気に入った戦闘をもう一度楽しみながら、爪を振るう爽快感を深められます。
もっとも、これらは本編に追加されたやり込み要素という位置づけです。長期的なプレイを強く動機づけるほどの大規模な再遊技要素ではなく、戦闘を気に入ったプレイヤーがさらに腕を磨くためのコンテンツと考えるのが近いでしょう。
総評
映像と音響の完成度は高く、キャラクターの動きも非常に滑らかです。爪による攻撃の重さ、敵をなぎ倒して前進する勢い、傷を負いながらも戦い続けるローガンの存在感が、画面と操作の両方から伝わってきます。God of WarやStar Wars Jedi: Fallen Orderのように、引き締まった近接戦闘を好むプレイヤーにも訴求する、激しく止まらないアクションに仕上がっています。
物語はすべての要素を明快にまとめきれておらず、特に後半の展開には疑問が残ります。一本道の進行も、自由な探索や選択を求める人には物足りないでしょう。それでも、ウルヴァリンがどのように戦うべきかという一点では、極めて説得力があります。多くの要素を満遍なく満たす作品ではないものの、最も重要な部分であるローガンの破壊的な戦闘体験を、強烈な形で実現した作品です。