IGN筆者、Insomniacの『Marvel’s Wolverine』も「親友が宿敵になる」展開の繰り返しと批判
IGNのCarlos Morales氏は、『Marvel’s Wolverine』でMr. SinisterことNathaniel Essexが主人公ローガンの友人として描かれる展開を批判しています。Insomniac Gamesのマーベル作品では、主人公の親しい友人が敵になる筋書きが続いており、今回はその型にMr. Sinisterを当てはめたことで、人物像や対立の説得力が損なわれていると指摘しました。
Essexの変心に説得力がない
本作の世界にはX-MENが存在せず、Essexは約30年にわたって秘密部隊「チームX」を率いてきました。ゲーム序盤では、野性的な状態のローガンとEssexの出会いや、2人の過去が描かれます。ローガンはEssexに命を救われ、生きる目的を与えられたと考えており、原作でプロフェッサーXが担う役割に近い存在として描かれています。
やがてEssexの正体が明かされますが、記事はその変化に十分な筋道がないと見ています。Essexは物語の大半で、ミュータントの権利を守る活動家として振る舞います。ボリバー・トラスクやリーバーズと戦い、ミュータントのために世界を安全な場所にしようと主張します。しかし実際には、自分がミュータントだという説明は嘘で、1800年代に科学実験で妻レベッカからX遺伝子を奪っていました。
Essexはヘリックス・エンジンでセンチネルを動かし、眠っているミュータントを目覚めさせようとします。その過程で巻き込まれる人間が犠牲になる計画は、記事によればMr. Sinisterよりもマグニートーに似合うものです。終盤には、巨大なヘリックス・センチネルの軍勢で世界規模の破滅を引き起こし、全ミュータントのX遺伝子を自分に取り込もうとしますが、「ミュータントを救う」という姿勢から「地球上の全員を殺す」という行動への変化が描き切れていません。
ローガンとEssexが対立するきっかけも、記事は不自然だと批判します。Essexが念力でトラスクを拷問し、ローガンが苦痛を終わらせるためにトラスクを殺す場面があります。しかしローガン自身も、ゲームを通じて爪で大勢の敵を切り裂いています。Essexがローガンの記憶を消し、野性的な状態にした過去だけでも、2人の決裂を描く理由になったのではないかと筆者は疑問を呈しています。
原作のMr. Sinisterらしさが薄い
原作のMr. Sinisterは、19世紀に優生学と突然変異に執着した科学者として始まり、X-MENの強敵となりました。アポカリプスから能力と不死性を与えられ、サイクロップスやジーン・グレイとも深い因縁があります。自らを「Mr. Sinister」と名乗る人物であり、自分の研究を道徳的に正当化しようとはしません。記事は、そうした人物を同情を誘う存在として描くのは難しく、原作を知るファンには本作のミュータント擁護者としてのEssexがちぐはぐに映ると述べています。
本作ではアポカリプスが過去にローガンを「死」の騎士にしたことが語られ、ローガンのアダマンチウム骨格にも関与した可能性が示唆されます。アポカリプスはローガンの心に何度か語りかけますが、姿を見せるのは影として登場するポストクレジット場面だけです。記事は、アポカリプスとMr. Sinisterには原作で長い関係があるのに、ゲーム内ではEssexがアポカリプスを知っている様子も、アポカリプスがEssexに影響を与えている様子もないと指摘します。両者の関係が描かれていれば、Essexの行動に一貫性を持たせられたかもしれない、というのが筆者の見立てです。
Essexは妻を殺してX遺伝子を奪い、ローガンを精神的に拷問して記憶を消しています。もともと悪人だったのなら、なぜ約30年もの間、ミュータントを守る英雄のように振る舞い、ローガンに自分の正しさを説き続けたのでしょうか。筆者は、より大きな目的があるようにも見えるものの、それが説明されないため、2人の対立が感情に訴えるものになっていないと論じています。また、ゲーム中に彼を「Sinister」と呼ぶ場面はなく、ボス戦の体力ゲージでも「Essex」と表記されます。筆者は、物語に合わせてMr. Sinisterの人物像を変形させたと批判しています。
成功した『Marvel’s Spider-Man』の型を繰り返す
筆者は、最初の『Marvel’s Spider-Man』でドクター・オクトパスをピーター・パーカーの師として描いた展開は成功していたと評価します。ピーターはオットー・オクタビアスと義手の研究に取り組み、2人の絆は、オットーのノーマン・オズボーンへの復讐心と、触手装置が精神に与える影響によって壊れていきます。原作とは異なる設定ですが、学問の才能を悪事に使う「もう1人のピーター」というドクター・オクトパスの本質は保たれていました。また、ベンおじさんを亡くしたピーターが父親代わりを求める気持ちや、尊敬する相手をまねるのではなく自分で選択する必要性にも結びついていたと説明しています。
問題は、その成功した構図をInsomniacが後続作でも繰り返したことです。『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』のティンカラーことフィン・メイソン、『Marvel’s Spider-Man 2』のヴェノム、そして本作のEssexはいずれも主人公の友人として登場し、やがて敵になります。
フィンはロクソン社を攻撃しようとする天才で、筆者は、主張に一理ある一方で殺人も辞さない「左派的な悪役」の型に当てはめられていると評します。ロクソン本社を破壊する計画でハーレム全体を危険にさらしますが、爆発の影響範囲を計算し損ねたためだと説明され、道徳面を取り繕おうとした結果、かえって愚かに見えると批判します。最後には贖罪のために命を落とし、物語全体が空虚に感じられるとも述べています。
『Marvel’s Spider-Man 2』では、ハリー・オズボーンがヴェノムになります。前作でシンビオートがハリーの療養装置に入っていたため、この展開には伏線がありました。しかし、シンビオートを着けていたハリーに当初は悪影響がなく、ピーターが着るとすぐに性格が変わり、ハリーのもとへ戻るとハリーを別の動機を持つ怪物に変えてしまうと筆者は指摘します。ヴェノムはハリーの「世界を癒やす」という言葉を掲げますが、実際にはシンビオートの軍勢で世界を征服しようとします。終盤ではハリーがスーツに支配されているように描かれ、対立の悲劇性も弱まっているという評価です。
次回作では悪役ごとの物語を
筆者によれば、『Marvel’s Wolverine』ではEssexが長年英雄を装う理由が明確にならず、正体が明かされた後のローガンとの口論も、かつての友人同士の決裂として響きません。ボス戦では「俺こそ未来だ」「お前に勝ち目はない」といった決まり文句が続き、見せ場としては楽しめても、物語に深みを与えていないと評しています。
記事は、今後のInsomniacとマーベルの協業が失敗すると決まったわけではないとしつつ、『Marvel’s Spider-Man 3』やヴェノムのスピンオフ、X-MEN作品に向けて、悪役それぞれに合った描き方を見つける必要があると結んでいます。