『Star Wars: Galactic Racer』は敗北に代償を設けた周回型キャリアを採用
『Star Wars: Galactic Racer』は、イベントを順番にこなして上位を目指す従来型のキャリアから離れ、敗北や車両の損傷がその後に響く選択型の選手権を打ち出します。リスクと報酬を見極めながら挑戦を組み立てる仕組みは、レースゲームに新たな遊び方をもたらす可能性があります。
敗北に重みを持たせるキャリア
1997年のGran Turismo以降、安い車を買ってルーキーズカップに出場し、報酬で次のイベントを解放する「下積みからの成り上がり」は、レースゲームの定番になりました。Need for SpeedやDirt Rallyなども、イベントを重ねて速いレースや高性能な車を目指す構成を採用しています。筆者は、映像や物理演算、タイヤのシミュレーションが進化する一方で、ひとりで進めるキャンペーンの仕組みは長く変わっていないと指摘します。
Fuse Gamesの共同創業者兼最高経営責任者、Matt Webster氏は、この作品の周回型キャリアについて「なぜ誰も先に思いつかなかったのでしょう」と語っています。大会の一覧を順にこなすのではなく、リスクと報酬が異なるイベントの組み合わせから、進む道を選びます。途中で負けすぎると選手権から脱落し、最初からやり直しです。負けが実際の結果につながる点に、筆者は新鮮さを感じています。
Webster氏は「ゲームはリスクと報酬の駆け引きですが、リスクには結果が伴わなければなりません」と話します。同氏が手がけたBurnoutでは、派手なクラッシュのあとに車がコースへ戻され、追い上げを迫られました。一方、近年の多くのレースゲームではクラッシュが十分に描かれず、失敗の重みが薄れてきたといいます。他ジャンルで広がった仕組みを取り入れるなかで、レースゲームはそうした変化から取り残されていたという見方です。
近年のレースゲームには、対人戦を中心に据えるシミュレーターと、自由度の高いForza Horizonのような作品という2つの流れがあります。コロナ禍後のシムレース人気を受け、開発者の間ではiRacing型の対人戦が重視されるようになったようです。Assetto Corsa CompetizioneやLe Mans Ultimateの成功も、その考えを後押ししています。
一方、Forza Horizonは親のようにプレイヤーを励まし、何をしても勝利として扱います。Forza Horizon 6は日本の車文化を多彩な形で楽しめる優れた作品ですが、レースに負けても大きな痛手はありません。道路を25%走破しただけでも報酬がもらえるような設計では、難しい挑戦に勝ったときの達成感が薄れやすいと筆者は述べています。
挑戦ごとに変わる車両構成
『Star Wars: Galactic Racer』の選手権は物語に沿って進み、車両の損傷やレースでの敗北に具体的な結果をもたらします。さらに、挑戦をひとまとまりの周回として構成することで、レースゲームでは珍しい車両構成の試行錯誤が生まれます。
周回中にはクレジットやパーツ、能力、アップグレードを獲得できます。コーナリング性能や最高速度を上げる一般的な強化もありますが、報酬にはランダム性のあるものも含まれます。たとえば、過熱中にラムジェットブースターの威力が20%上がるアップグレードを手に入れたとします。次の舞台が、車両がすぐに過熱する灼熱の惑星ジャクーなら、あえて過熱状態を保つ構成を組むこともできます。失敗すれば爆発して車両が損傷し、性能や能力に影響が出ないよう修理が必要です。うまくいけば、Balatroで勢いに乗ったときのような無敵感を味わえます。
惑星ごとの環境も、周回ごとの選択に関わります。ジャクーでは過熱が問題になる一方、アンドー・プライムの氷原ではエンジンが凍結するため、暖かい場所を探さなければなりません。暑い惑星では日陰を通り、腐食性の液体を避けるためにジャンプ台を使うなど、コース取りも変わります。パーツやアップグレードと組み合わせれば、不利な状態を有利に変える車両構成を考えられます。
レース前に車両の各部を起動するクイックタイムイベント(QTE)もあります。操作に手応えを与える演出ですが、周回中に支援者を獲得すると、特定の回数だけレース前の確認を行うことで報酬を得られる場合があります。そのクレジットをラムジェットの修理に使いたいなら、演出だった操作がその周回の重要な判断に変わります。登場人物も会話だけでなく、レース中に迫られる選択を通して物語に関わります。
レースゲーム全体に広がる可能性
この仕組みは、ほかのレースゲームにも応用できると筆者は考えています。EAのF1シリーズなら、クラッシュに長く残る影響を持たせることで、ドライバーのキャリアに緊張感を加えられるかもしれません。Need for Speedでも、警察に捕まったときにクレジットを失うだけでなく、車やキャリアの進行状況まで失う仕組みが考えられます。対人戦中心のシミュレーターにも、失敗に代償があるひとり用キャリアを求めるプレイヤーはいるはずです。
筆者がとりわけ可能性を感じているのは、オープンワールド型のレースゲームです。Forza Horizon 6は自由で盛りだくさんな楽しさが魅力ですが、勝っても負けても車やクレジットが次々に手に入るため、進歩や達成感が損なわれる面があります。毎回異なる物語を持つフェスティバルや、必ずしもLegend Islandに到達できるとは限らない構成も考えられるとしています。
Fuse Gamesのクリエイティブディレクター、Kieran Crimmins氏は、オープンワールドのレースではプレイヤーが何でもできる一方、この作品では選択が必要だと説明します。その選択は勝利への道にも、敗北の原因にもなり得ます。
筆者は、Half-Lifeの重力銃やCrysisのナノスーツ、Shadow of Mordorのネメシスシステムのように、ほかのゲームにも欲しくなる仕組みだと評価しています。同じ年にはCarmageddon: Rogue ShiftやDriving Rogueも登場しており、Fuse Gamesと並行してローグライト形式のレースゲームが開発されていました。レースゲームに新たな物語の生まれ方と、車両構成を試す再プレイの楽しさをもたらす流れが広がれば、長く続いたルーキーズカップからの成り上がりにも変化が訪れそうです。