『Magic: The Gathering』Alchemyは2027年初頭に終了へ、代表カード10選
2026年09月15日 | #ゲーム紹介 | Polygon
デジタル専用フォーマットとして多くの賛否を呼んだAlchemyが、2027年初頭の終了に向けて最終章に入ります。2021年にMTG Arenaへ導入されたこの試みは、カードの性能を後から変更したり、紙のカードでは実現しにくい効果を取り入れたりすることで、従来のゲームデザインを大きく広げました。専用キュー終了後も、関連カードはHistoric、Timeless、Brawlなどで使用できます。
Alchemyが残したデジタル専用の設計思想
ウィザーズ・オブ・ザ・コーストがAlchemyで目指したのは、紙のカードゲームをそのままデジタル化することにとどまらない環境でした。Conjure、Seek、Perpetualといったデジタル向けのメカニズムによって、ゲーム中にカードを生成したり、複数の領域をまたいで能力を恒久的に変更したりできます。さらに、リリース後にカードの数値や能力を調整できるため、紙で印刷してしまえば変更できない問題にも対応できました。
一方で、こうした仕組みは紙のMagicを好むプレイヤーから強い反発を受けました。デジタル環境では、Black LotusやAncestral Recallを含むPower Nineをデッキに加えたり、先攻と後攻の勝率差を直接補正したりできます。従来のルールでは考えにくい大胆な試みでしたが、その自由度こそがAlchemyの特徴でした。
ここでは、Alchemyの歴史を象徴するカードを、10位から1位まで紹介します。単純に強力なカードだけでなく、後から調整されたカードや、デジタル環境だからこそ成立したカードも選ばれています。
10位から7位まで――ゲームの前提を変えたカード
10位はForsaken Crossroadsです。タップ状態で戦場に出る土地で、出たときに色を1つ選び、占術を行います。さらに自分が後攻なら、すぐにアンタップできます。先攻と後攻の不均衡をカード自身が認め、後攻側を直接補助する設計になっている点が重要です。単独で勝利を決めるカードではありませんが、Alchemyがゲームの基本ルールにまで手を入れようとしていたことを、分かりやすく示しています。Alchemy以外でもHistoricやBrawlなどで使われました。
9位のSymmetry SageはAlchemy専用カードではありませんが、デジタル版だけが再調整された例として欠かせません。デジタル版では、タフネスが0/2から0/3へ変更され、Magecraftで他のクリーチャーに与える強化も引き上げられました。インスタントやソーサリーを唱えるかコピーすると、対象クリーチャーの基本パワーを3にする能力によって、青のアグロデッキで脅威になりました。紙で所有しているカードを変更せず、デジタル環境だけ別バージョンとして運用できることを示したカードです。
8位のFragment Realityは、白1マナでトークンでないアーティファクト、クリーチャー、エンチャントを追放するインスタントです。ただし、対象にしたカードのオーナーは、自分のライブラリーからそれよりマナ総量が少ないクリーチャー・カードをランダムに得ます。強力なパーマネントを低コストで処理できる代わりに、相手へ別の脅威を与える可能性がある仕組みです。
その効率の高さからAlchemyの外でも使われ、Leyline系カードとの組み合わせがHistoricやTimelessで強力かつ安定した戦略を生み出したため、後に再調整されました。変更後は相手のパーマネントだけを対象にできるようになっています。デジタル環境なら、発売後に見つかった危険な相互作用へ対応できることを示す一例です。
7位はFearsome Whelpです。終了ステップの開始時、手札にあるドラゴン呪文のコストを恒久的に減少させます。ドラゴンを唱えるためのコスト軽減自体は珍しくありませんが、この能力はWhelpが生き残るほど効果が蓄積します。数ターン放置されれば、ゲーム中に手札へ集めたドラゴンを大幅に安く唱えられるようになります。部族デッキ向けの見慣れた効果を、デジタルならではの恒久的な変更へ発展させたカードであり、早い段階で再調整対象になったことも、その危険性を物語っています。
6位から4位まで――生成と検索が生む予測不能な展開
6位のInquisitor Captainは、4マナのクリーチャーです。墓地、手札、ライブラリーに存在する低コストのクリーチャーの枚数や構成を参照し、条件を満たすクリーチャーをSeekで探します。該当する2枚のうち1枚を戦場に出し、もう1枚をライブラリーへ戻すため、低コストのクリーチャーを大量に採用したデッキでは、1枚から突然大きな盤面を作れます。
墓地や手札、ライブラリーをまとめて確認し、通常のカードゲームなら扱いが難しい形で戦場へ展開する点が特徴です。Town-Razer Tyrant、Goldspan Dragon、Fearsome Whelpなどとともに再調整されましたが、安いクリーチャーを多く入れたデッキ構成を、4マナのクリーチャー1枚で一気に価値へ変える発想は、従来のカードにはあまり見られないものでした。
5位はOracle of the Alphaです。3マナの青い鳥・ウィザードが戦場に出ると、Ancestral Recall、Black Lotus、5枚のMox、Timetwister、Time Walkを生成し、それらをライブラリーへ加えて切り直します。Magicの歴史でも特に有名で、通常の大会環境では扱いにくいPower Nineを、デジタル空間ではデッキに組み込めるようにしたカードです。
効率だけを見れば、このランキングに並ぶ他のカードに及ばないかもしれません。しかし、紙のカードとしては成立させにくい効果を、デジタル版なら実装できるというAlchemyの自由さを、これほど端的に表すカードは多くありません。デジタルカードプールが持つ遊びの幅を象徴する存在です。
4位のKey to the Archiveは、Spellbookメカニズムの魅力を示したアーティファクトです。4マナで、戦場に出たときに色マナを生み出せるだけでなく、あらかじめ用意されたカード群から呪文を選べます。候補にはDemonic Tutor、Time Warp、Counterspell、Day of Judgment、Lightning Boltなど、極めて強力な呪文が含まれます。
毎回同じカードを確実に探す通常のサーチとは異なり、何を得られるかは選択肢の中から判断することになります。それでも、1回の選択でゲームの流れを大きく変えられる呪文へアクセスできるため、単なるマナ補助アーティファクトではありません。膨大なカードプールの一部へ、小さな入口を開くようなデザインです。
3位から1位――Alchemyを象徴する強力なエンジン
3位はTown-Razer Tyrantです。4マナのドラゴンで、戦場に出たとき相手の土地でない基本でない土地を対象にします。その土地は生け贄に捧げなければダメージを受ける状態になり、多色デッキのマナ基盤を直接攻撃しました。単なる土地破壊ではなく、相手に土地を維持するかライフを失うか迫るため、マナを複数色へ依存するデッキには特に厄介なカードでした。
このカードは複数回にわたって再調整され、最終的には基本でない土地だけを対象にする形へ制限され、ダメージが発生するタイミングも相手のアップキープから終了ステップへ変更されました。紙で印刷されたカードなら難しい調整を、デジタル環境では実施できるというAlchemyの特徴を、初期から強く印象づけたカードです。
2位はRusko, Clockmakerです。4マナ3/3のクリーチャーで、戦場に出たときにMidnight Clockを生成します。さらに、クリーチャーでない呪文を唱えるたびにClockを軸とした追加の価値を生み、相手のライフを削りながら自分のライフを増やします。盤面に出た瞬間だけでなく、その後に非クリーチャー呪文を使うたびにエンジンが動くため、短期戦でも長期戦でも対処を迫られました。
Conjureと繰り返し発生するデジタル効果を、1体のクリーチャーに詰め込んだカードです。紙で同じ処理を行うには、生成物や誘発の管理が複雑になりすぎる可能性があります。HistoricやBrawlでも特に悪名高いカードとなり、デジタル専用カードが紙のカードとは異なるゲーム感覚を生むことを示しました。
1位はCrucias, Titan of the Wavesです。4マナ3/3の黒赤、いわゆるグリクシスのクリーチャーで、戦場に出たときから強力な価値を生み出します。宝物・トークンを得られるだけでなく、手札に余ったカードを別のリソースへ変えられる、柔軟なカード選択能力を持っていました。
重要なのは、単にカードを増やすだけではなく、その時点で必要な価値を自分で選べる点です。手札の不要なカードを、マナ、手札の質、盤面の展開など、デッキが求める形へ変換できるため、通常のミッドレンジ戦略で対抗するのが難しい存在でした。黒赤ミッドレンジがAlchemyで高い戦績を残した後、ウィザーズはCruciasのパワーを3から1へ引き下げています。
Cruciasは、Alchemyがどこまでカードの価値生成を押し広げられるかを示した一方で、強力すぎるエンジンが環境を圧迫した例でもあります。専用キューが終了しても、これらのカードはHistoric、Timeless、Brawlなどにデジタルカードとして残ります。Alchemyそのものは幕を閉じますが、カードの恒久的な変更やランダム生成といった実験の成果は、今後も各フォーマットに影響を与え続けることになります。