『Magic: The Gathering』新カードの類似表現をめぐりWizardsが意図的な引用だったと説明
『Magic: The Gathering』の新カードに使われたイラストが、過去の別カードの構図を無断で写したのではないかという指摘を受け、販売元のWizards of the Coastが見解を示しました。同社によると、問題となった類似表現は偶然の一致ではなく、アートディレクションによって意図的に盛り込まれたものだったとのことです。一方で、元の作品を手がけたアーティストに事前の説明やクレジットがあったかどうかは、明らかにされていません。
問題となった2枚のカード
発端となったのは、今後発売されるReality Fractureセットと同時展開される、単一の構築済みデッキに収録されるJace, Multiverse Architectです。Volkan Baga氏が手がけたこのカードのイラストについて、Liiga Smilshkalne氏が、2023年のカードBreach the Multiverseに使われた自身の作品の中心的な要素を再利用していると指摘しました。
Smilshkalne氏は削除済みのBluesky投稿で、意図的なオマージュであれば歓迎したものの、特徴的な構図が自分に知らされないまま、クレジットもなく使われたことに異議を唱えたとしています。特に問題視したのは、画面中央を縦に走る線と、その周囲を取り巻く形状です。
Breach the Multiverseでは、ファイレクシアの侵攻に利用された堕落した世界樹Realmbreakerが描かれています。空へ伸びる枝の内側には、Elesh Nornの頭飾りを思わせる淡い色の左右対称な王冠状の形があり、中央にはファイレクシアの油が滝のように流れています。この線や周囲の輪郭が、Jace, Multiverse Architectのイラストでも青い魔法の触手や縦方向の光として描かれていました。
作者が指摘した象徴性の違い
Smilshkalne氏は、元のイラストにおける中央の線には明確な意味があると説明しています。Realmbreakerを流れるファイレクシアの油を表現するとともに、周囲の構図と組み合わさってファイレクシアのシンボルを形作る要素だったとのことです。
そのため、新カードでも同様の線が残されたことについて、元の象徴的な意味を理解しないまま再利用されたように見えると批判しました。Smilshkalne氏は「理解しないまま、少なくとも確認もせずに自分の作品がコピーされたことに、とても失望しています」と投稿し、新しいイラストの内容には元作品の油の滝を残さないほうがよかったとしています。Jaceの場面では、Realmbreakerに込められていた象徴的な役割がそのまま当てはまらないためです。
Wizardsは「直接参照する」指示だったと説明
Wizards of the CoastはPolygonに対し、Baga氏へSmilshkalne氏のイラストを直接参照するよう指示していたと説明しました。同社は、2作品をめぐる議論について明確にしたいとして、「Volkanには、この作品を直接参照するようアートディレクションを出していました」としています。
同社によれば、この引用は本作におけるJaceの物語を視覚的に示すためのものでした。Jaceはファイレクシアに捕らえられて完成化された後、Meditation Realmの内部から呪文を使い、最大の敵を消し去るために多元宇宙そのものを書き換えようとします。しかし呪文はJace自身をのみ込み、肉体を破壊しました。その後、砕けたJaceの精神の断片が新たな肉体を作り、そのうちThe Theoristを名乗る存在が、暗い並行多元宇宙であるEchoverseを生み出します。
The Theoristの最終的な目的は、Echoverseによって本来の多元宇宙を置き換えることでした。Realmbreakerには次元を融合させる力があるため、ファイレクシアを消し去ろうとしたJaceが、結果的に自分が排除しようとしたものと同じ存在になっていく、という物語上の対比を示すために、元作品の視覚的要素を重ねたとWizardsは説明しています。同社は、Reality Fracture全体のビジュアルストーリーが、Jaceが過去の出来事を通じて得た強力な魔法を利用・取り込む姿を中心に構成されているとも述べました。
制作過程と今後の対応
Wizardsは、Baga氏がこのイラストを従来の手法で制作したことも明らかにしています。手描きのスケッチから作業を始め、最終的な油彩画まで仕上げたもので、Smilshkalne氏のデジタル作品から要素を抜き出し、色を変えて新しい絵に合成したわけではないとのことです。
Baga氏のエージェントであるMark Aronowitz氏も、Baga氏はクリエイティブブリーフに従い、最終的な制作に入る前に類似点についてアートディレクターへ確認していたと説明しました。Aronowitz氏によると、Baga氏は背景の渦や全体の雰囲気について事前に相談し、そのままの構図で進めるよう指示を受けたとしています。「参考資料を使う場合には、クリエイティブ上の行き違いが起こることもありますが、Volkanはスケッチから最終的な油彩まで、誠実かつ非常にプロフェッショナルに作業しました」と述べました。
ただし、Wizardsの説明では、Jace, Multiverse Architectの公開前にSmilshkalne氏へ今回の引用予定が伝えられていたかどうかは明かされていません。同社は、今回の問題を受けて社内で制作プロセスについて協議したとしています。Magicでは共有された多元宇宙のつながりを示すため、過去のイラストを想起させる表現を長く用いてきた一方、象徴的な作品を手がけたアーティストへ、そうした引用をどのように伝えるべきかについて追加の議論が生じたとのことです。Wizardsは最後に、両アーティストへ連絡を取ったと明らかにしました。