← 最新記事一覧

『Magic: The Gathering』ジェイスの後継者タミがプレインズウォーカーの力を継承

2026年09月15日 | #発売情報 | Polygon

『Magic: The Gathering』ジェイスの後継者タミがプレインズウォーカーの力を継承

約20年にわたって物語の中心にいたジェイス・ベレレンが命を落とし、その力と意志を受け継ぐ新たなプレインズウォーカーとしてタミが描かれます。Wizards of the Coastは、次期セットReality Fractureのストーリーを通じて、ジェイスの「後継者」が単なる復活や別人の姿を借りた再登場ではないことを明らかにしました。タミはジェイスから生まれた存在でありながら、自分自身の選択によって新しい道を歩むキャラクターです。

※以下、Reality Fractureおよび関連ストーリーの重大なネタバレを含みます。

ジェイスが作り出したもう1つの現実

『Magic: The Gathering』の主要人物として長く描かれてきたジェイスは、かつて多元宇宙を守るゲートウォッチの一員として、チャンドラ・ナラーやリリアナ・ヴェスらと数々の脅威に立ち向かってきました。しかし、Reality Fractureでは、従来の英雄としてではなく、現実そのものを書き換えようとする存在として登場します。

発端となったのは、2025年のセットTarkir: Dragonstormにまつわる短編ストーリーです。ジェイスは瞑想領域が「あらゆる現実の基盤」であり、「意志の力だけで形を変えられる」ことに気づきます。そこでドラゴンのウギンが持つSpirit Gemの魔力を利用し、過去に起きた災厄や死をなかったことにしようとしました。エルドラージやニコル・ボーラスが存在しない世界、ヴラスカがファイレクシアンにならなかった世界など、歴史そのものを改変しようとしたのです。

しかし、呪文を発動したジェイスの肉体はガラスのように砕け散ります。死亡したと思われたジェイスでしたが、Reality Fractureの物語では、砕けたのは肉体だけでなく精神も複数の断片に分裂していたことが判明します。それぞれの断片はジェイスのための新たな肉体を作り、そのうちの1つである「Theorist」が全体の主導権を握りました。

Theoristはジェイスの人格からさまざまな要素を切り捨て、冷酷さと計算高さだけを残していきます。そして、現実を上書きするための別世界Echoverseを作り上げました。目的は、現在の多元宇宙をEchoverseに置き換え、War of the SparkやNew Phyrexiaへの侵攻といった出来事まで消去することです。Echoverseには、ストリクスヘイヴンを反転させたような魔法学校Hexhavenも作られ、リリアナなど既存キャラクターの別バージョンが配置されました。

ジェイスの断片から生まれたタミ

タミは、ジェイスが自分の死後も存在し続けるために用意していた予備計画でした。彼女はLorwyn Eclipsedのストーリーで、ストリクスヘイヴンに通う物静かで優秀な1年生として初めて登場します。Quandrix Collegeの学生であるタミは、確率を操り、現実をゆがめる魔法によって複雑な問題を素早く解決できました。

一方で、彼女は他人への思いやりよりも冷たい論理を優先し、友人たちとの間に距離を作っていました。その性格には理由があり、タミはジェイスの一部から作られ、長いあいだTheoristのもとで訓練を受けていたのです。本人が自覚していたかどうかにかかわらず、彼女は当初からEchoverse計画を実現するための存在として組み込まれていました。

タミの立場が決定的に変わったのは、Secrets of Strixhavenの短編ストーリー第6話です。彼女は預言者ジャジィーを魔法のポータルへ押し込み、友人たちを裏切ってその場を去りました。タミは自分がこの行動をするために作られたと認めながらも、共に過ごした日々が人生で最も幸せだったとも語っています。その後、ポータルの向こう側でTheoristと再会しました。

Reality Fractureでは、Theoristが多元宇宙の創造を知るため、ジャジィーを殺そうとします。すべての預言者の魂は創造と結びついているため、彼女を通じて得た知識があれば、現実をEchoverseで完全に上書きできると考えていたのです。

しかしリリアナはタミに対し、その計画が実行されれば元の多元宇宙に生きる人々の魂を押しつぶすことになると説明します。Echoverseに存在する「複製」たちは完全な魂を持っておらず、元の世界の人々や物を消費して置き換えるだけの存在だというのです。タミはHexhavenの住人やEchoverseの人々が、本当の友情を築けるのかどうかにも疑問を持ち始めます。彼女の目には、世界そのものが「偽物」に見えるようになっていきました。

自分の意思でTheoristに反旗

タミの疑念は物語第6話で決断へと変わります。彼女はTheoristと対峙し、かつては彼の計画を成功させるために作られた自分自身が、彼を止めなければならないと判断しました。これはタミにとって、誰かに与えられた役割ではなく、完全に自分の意思で選んだ最初の行動です。

多元宇宙とEchoverseが衝突するなか、タミはかつての同級生キロルとも再会します。キロルは過去の裏切りを簡単には許しませんが、タミは信頼を取り戻せていなくても行動を起こします。彼女は、かつて自分を信じてくれたキロルを失望させた責任を認め、その状況を直すことが自分の役目だと考えます。物語は、タミが一度正しい行動を取っただけで罪を帳消しにするのではなく、過去の選択と向き合いながら前進する姿を描いています。

その一方で、ヴラスカ、チャンドラ、アジャニ、ガラクは、Theoristが精神牢獄に閉じ込めたジェイスの断片を集めていました。ヴラスカがTheoristを刺すと、閉じ込められていた断片がジェイスのもとへ戻り、分裂していた人格が一時的に1つへ統合されます。

統合されたジェイスは、自分の命と現実改変の呪文が結びついていることを理解します。仲間たちが呪文とEchoverseの接続を断つことには成功しますが、ジェイス自身はヴラスカに抱かれたまま息を引き取りました。ここで死を迎えたのはTheoristだけではなく、ジェイス本人でもあります。

タミが受け継いだプレインズウォーカーの灯

ジェイスの死によって呪文は止まりましたが、Echoverseと元の多元宇宙はすでに絡み合った状態でした。物語の終盤、ジェイスの肉体からプレインズウォーカーの灯が現れ、タミへと移ります。強大な魔力を受け入れたタミは、イニストラードの月からエルドラージ・タイタンのエムラクールを呼び出しました。

タミの求めに応じたエムラクールは、元の多元宇宙と人工的なEchoverseを慎重に切り離し、そのうえでEchoverseを飲み込みます。タミは新たに得た力によって現実の崩壊を食い止め、ストリクスヘイヴンへ帰還しました。

キロルから本当の名前や正体を尋ねられたとき、タミはジェイスやTheoristの名を自分のものとして名乗りませんでした。ジェイスのために作られた存在だとも、彼の一部だとも説明せず、自分が何者なのかをこれから知っていきたいと答えます。キロルが関係を最初からやり直すために新しい自己紹介を提案すると、彼女は「私はタミ。ただのタミ」と名乗りました。

Echoverseが崩壊する直前、ジェイスの灯に残っていた最後の印象がタミへ語りかけます。ジェイスは彼女を、自分が用意した「最後の安全策」と位置づけました。デスパーキング以降、プレインズウォーカーの灯は極めてまれになっており、ジェイスは自分の死後にタミがその灯を受け継ぐよう、彼女を作っていたのです。彼はタミに、自分の灯は今や彼女のものだとして、世界をより良くする仕事を続けてほしいと託しました。

復活ではなく、新たな継承者へ

タミの内側には、ジェイスに由来する好奇心、外交能力、生存本能、そしてやり直す力が現れます。物語では彼女がジェイスであり、2人が1つであるかのような表現も登場しますが、これはジェイスの意識がタミの頭の中で独立して存在し続けるという意味ではありません。

タミはジェイスから作られ、彼の灯と精神の一部を受け継いだ存在です。しかし、そこから何を引き継ぎ、どのような人物になるのかを決める自由は彼女にあります。エムラクールに干渉できるほどの力を持ちながら、ジェイスの肉体や人格をそのまま再現した存在ではありません。ジェイスの能力や性質の一部を備えつつ、彼と同じ失敗や選択を繰り返す義務からは解放されています。

最後の場面では、ヴリンで行われたジェイスの葬儀の後、タミがヴラスカの前に現れます。青いマントをまとい、ジェイスの灯と仕草を備えながら、ジェイスが愛したヴラスカの姿を思わせるゴルゴンの肉体を持つタミを見て、ヴラスカは幽霊と対面したように感じます。それでもタミはジェイスの名を名乗らず、自分は新しい存在だと示したうえで、世界をより良くするために力を貸すと伝えます。

この展開によって、ジェイスの物語は単純な復活や完全なコピーではなく、アイデンティティの継承として締めくくられます。ジェイスは死亡しましたが、彼の記憶や能力、そしてプレインズウォーカーの灯はタミへ渡りました。タミは受け継いだものをすべてそのまま保存するのではなく、何を残し、何を変えるのかを自分で選びます。長年にわたって本作の象徴だったキャラクターの退場と、その後継者の誕生を同時に描く展開です。