『Control Resonant』終盤の16bit風RPGパートは、Hedronの攻撃で壊れたDylanの現実を表現するために生まれた
2026年10月24日 | #ゲーム紹介 | Game Informer
この記事は『Control Resonant』の終盤、最終決戦の直前に訪れる展開について、大きなネタバレを含みます。元記事の筆者は、未クリアの方はまずゲームを遊んでから読むことを勧めています。元記事のタイトルで伏せられていた作品は、1995年発売のスーパーファミコン用RPG『EarthBound』(日本では『MOTHER2』)です。Remedyの開発陣が、このパートの狙いと制作の裏側をメールインタビューで語りました。
最終決戦前にゲームが16bit風RPGへ変わる
終盤、ゲームは突然時代とジャンルを切り替え、ターン制バトルを備えた16bit風のRPGになります。JesseとDylanが幼い頃に力を持つ物体であるスライドプロジェクターに出会い、トラウマを負った経緯を描くための演出です。笑えて、切なくて、奇妙で、2人の過去を見ている感覚を強く与える場面だと筆者は評価しています。『EarthBound』などを遊んだ思い出がある筆者には特に響き、2人の子ども時代がこの形で描かれることに、不条理ながら実感があったとのことです。
現実が壊れる感覚をプレイヤーにも
Lead level designerのAnne-Marie Grönroos氏によると、この展開の土台は、HedronがDylanの心を攻撃して現実を壊し、Dylanが自分を作り直さなければならないという設定です。現実が壊れる様子をゲーム自体にも及ぼし、第四の壁を破ることで、Dylanの混乱をプレイヤーにも味わってもらうことを狙いました。
企画の経緯
Remedyでは、アイデアが1人や1チームから出ることは少なく、正式なプレゼンもほとんど行わないそうです。職種を超えて議論し、形になるまで練り上げていきます。ライターの最初の案はテキストアドベンチャーでした。Patterningに侵されたDylanが、ゲームの最も初期の形へ退化していく様子を示すためです。しかしAlan Wake 2のDLCがすでに同じ手法を使っていたため、別の案を探すことになりました。
そんな折、数か月前にあるレベルデザイナーがJRPG風のピクセルアートを使ったサイドクエストを提案し、そのまま立ち消えになっていたことをGrönroos氏が思い出しました。そこで同氏は、昔のFinal Fantasy風JRPGを提案します。DylanとJesseが子どもの頃に遊んでいたのは、テキストアドベンチャーよりこうしたゲームだろうと考えたためです。周囲は盛り上がり、実現可能性への懸念はあったものの、制作が決まりました。元の提案者がこのジャンルの大ファンで、制作経験もあったことも後押しになったそうです。Grönroos氏は、こうした作品を想定していないエンジンで実現する方法を探る意欲のない人には、こんな無茶は頼まなかっただろうと話しています。
EarthBoundをはじめとするJRPGへの思い入れ
JRPGクエストを担当したSenior level designerのArhi Makkonen氏は、このクエストが古いJRPGで遊んでいた頃の感覚から生まれたと説明しています。影響を受けた作品として、Final Fantasy、Breath of Fire、Chrono Trigger、Secret of Mana、Bahamut Lagoon、そしてMotherを挙げました。最も大切にしたのは、ゲームが魔法のように感じられた時代の気持ちを再現することだったといいます。
ビジュアル面ではMotherの影響が大きく、Rebuildクエストの見事なピクセルアートはコンセプトアーティストのJuuso Anttila氏が手がけました。Motherの画風は、謎めいたアメリカの小さな町という雰囲気にぴったり合っていたそうです。「Not-Mother」を巡る物語をMother風に作るという言葉遊びも、見逃せなかったとのことです。
Northlightで2D JRPGを作る工夫
Makkonen氏によれば、Northlight Engineは三人称視点のアクションゲーム向けに作られた特化型のツールで、2DのJRPGとは正反対の性質を持ちます。そのため、かなり工夫を凝らす必要がありました。
- 2Dに見える画面は偽物で、JRPGの舞台であるOrdinaryは3D空間の中にあり、カメラが真上から映しているだけです。
- その場所はゲーム世界の隅にある小さな区画で、3DのDylanが立つのもやっとの広さです。
- ゲーム内ゲーム全体はLuaで書かれています。基盤となる仕組みはゲームデザイナーのTommi Saalasti氏が作り、Makkonen氏がその上に物語を載せました。
- 専用ツールがなかったため、Makkonen氏はすべての動きを手作業でコードにしました。Dylanが1歩上に進み、左を向き、テキストボックス1、テキストボックス2、といった具合です。Rebuildクエストだけで、ほかのクエストすべてを合わせたのと同程度のLuaコードになる見込みだそうです。
- アニメーションは最大2フレームに制限され、一部のUIは静止したパーティクルエフェクトで作られました。
多くの妥協があったものの、中心にあるのは少し変わった形で語られる素晴らしい物語であり、その力が不完全さを補ってくれると信じたとMakkonen氏は話しています。FBCの清掃員Ahtiもこのパートにカメオ出演します。
戦闘システムと賛否が分かれた反応
このパートには戦闘が多くないため、深いRPGシステムや成長要素は作られませんでした。戦闘は物語を語る手段として使われ、いじめっ子にDylanが苦しめられる様子、ネズミが相手の初めての戦い、そしてFBCによる連れ去りが描かれます。シンプルながら意味のある選択肢を用意するため、何度か調整を重ねたそうです。通常攻撃のほかに特殊能力があり、Dylanは単体への強打、Jesseは全体への射撃を使います。複数の敵が同じキャラクターを狙うと防御が必要になる程度に、敵のダメージも設定されています。
懸念は2つありました。ピクセルグラフィックスが感情面の効果を弱めないかという点について、Grönroos氏はあったと認めたうえで、脚本を信じることにしたといいます。ピクセルアートの作品でも同様の感動を生んだ例は多く、抽象度が高いほどキャラクターに感情移入しやすく、プレイヤーの解釈に委ねられるからです。
もう1つが、アクションゲームのファンが不満を持たないかという点で、これが最大の懸念でした。プレイテストでは好き嫌いがはっきり分かれ、大幅な短縮も検討されました。最終的には、ファストトラベルの選択肢を加え、一部をスキップ可能にしたうえで内容は維持しています。嫌う人より好きな人の方が多く、開発陣自身が楽しんでいたものを犠牲にしたくなかったためです。
印象的な場面を生む開発の考え方
Remedyは、予想外で突き抜けた場面で知られています。Grönroos氏によると、そうした場面は自然に生まれることもあれば、見せ場を意識して議論することもあります。Into the Sinkholeクエストのように、最初は目玉として計画されていなかったものの、特別なものになりそうだったため力を注ぎ続けた例もあります。一方、ゲーム内の多くのセットピースは、プリプロダクションの早い段階から見せ場として計画されていました。
『Control Resonant』では、Ashtray Mazeのような単一の場面がほかをかすませる事態を避け、複数の印象的な場面を用意したかったそうです。プレイヤーごとに好きな場面が違うことを、同氏は喜んでいます。さらに前作との違いとして、Sinkhole、Underpass Fault、JRPGパートといった記憶に残る場面の多くが、派手なアクションではなく、感情的で抑えめな方向になっている点を挙げました(大規模なアクションのセットピースもあります)。これもまた面白い挑戦だったといいます。
Underpassの電球クエストの発想
The Underpassの任務で電球を交換する場面も、同様に予想外のアニメーション的な展開をたどります。Grönroos氏によれば、出発点は電球交換という笑えるほど日常的な作業に、超常的なひねりを加えるというアイデアでした。当初は漫画風の男性は登場せず、実写映像を使う予定でした。電球の交換方法を解説する昔ながらの「労働安全」ビデオという設定で、クエストが進むにつれ、映像の中の作業員がDylanの行動を把握しすぎていることが明らかになり、最後はDylanが映像に閉じ込められるという構想です。この案は1時間のワークショップから生まれました。
正式なプレゼンはなく、「Dylanが儀式のように電球を替えるクエストはどうか」「意思を持つ安全ビデオが手順を説明し、Dylanが映像に閉じ込められる」といったやり取りで形になったそうです。後に実写が難しいと分かって現在の漫画風表現に切り替えましたが、それは当初の案よりさらに面白くなったとGrönroos氏は話しています。