『Marvel's Wolverine』ディレクターが語る、回復能力と怒りを結びつけた戦闘設計と強化された感覚の調整
2026年11月04日 | #ゲーム紹介 | Game Informer
Insomniacが手がけた『Marvel's Wolverine』の発売後、ゲームディレクターのMike Daly氏がGame Informerのインタビューに応じました。ローガンの描き方、リニアな構成、発売後に議論を呼んだ感覚による誘導表示、戦闘システムの設計意図などが語られています。
「倒れても立ち上がる」ローガン像
物語面では、何世紀もの経験を持ちながらそれを覚えていない男として、疲れや老練さ、皮肉っぽさを併せ持つ人物を目指したとのことです。回復能力によって恐れを知らず、率直な物腰を見せる一方、正義感を無視しきれない人物でもあります。
ゲームプレイでは、回復能力、爪、狂暴な怒り、動物的な力、強化された感覚、アダマンチウムの骨格とそれに伴う重量感を、プレイヤーが違いとして感じられることを重視したそうです。傷つき、その痛みを深く感じながらも必ず立ち上がって進み続けるという粘り強さが、物語とゲームプレイの中心的なテーマになっています。
リニアな構成を選んだ理由
本作はスパイダーマンのような大都市のオープンワールドではなく、直線的な冒険になっています。Daly氏は、コミックのように1ページごとにアクションと意味のある物語の進展がある、ウルヴァリンの物語に合うゲームを作ったと説明しました。
開発では複数の構造や物語を試し、「ウルヴァリンを正しく描く最良の方法か」という観点で検討したといいます。しっくりこないものが多く、前提を見直して好きなウルヴァリンの物語を参考にした結果、勢いがあり、すべての場面がキャラクターらしい物語にたどり着きました。他のゲームなら成立しても、ウルヴァリンらしさを強く感じさせない場面は、作ろうとした世界観の一貫性を損なうため、内容を絞り込んだそうです。
発売後に議論になった感覚の誘導表示
アイテム回収や進行ルートを示す誘導表示については、発売後にオンラインで議論がありました。Daly氏によると、ローガンの強化された感覚は原作でも知られるミュータント能力であり、他のキャラクターにはできないことをプレイヤーができるようにしたかったとのことです。ローガンが嗅いだり聞いたりできる関連情報は、プレイヤーにも見えるようにしました。
収集要素では、感覚の手がかりを探して見つける楽しさを狙ったそうです。手がかりを使えば、物語とアクションの勢いを保ったまま広い範囲を回れるという考えでした。
一方、発売後には、感覚の表示が抽象的な「デザイナーによる誘導」に見えるという声や、探索の方法を選べるようにしてほしいという声がありました。これらの意見は発売後のパッチに反映されています。
- 匂いの軌跡の見せ方を改善し、抽象的な表示ではなく世界に属するものとして感じられるようにした
- 任意の収集要素について、感覚の手がかりを消せるオプションを追加した
- 匂いの軌跡を、プレイヤーがヒントを求めるまで薄く表示するオプションを追加した
Daly氏は、強化された感覚が本物のウルヴァリンを描くうえで欠かせない要素であることは変わらないとしています。そのうえで、プレイヤーが体験の仕方をより柔軟に選べるようになったことを歓迎しました。
戦闘の鍵は「回復」と「怒り」の連動
戦闘で重視したのは、ローガンの回復力、怒り、爪の手触り、そして殺傷力の4点です。
回復力については、生き延びるうえで重要だと感じさせる、目立つ要素にする必要がありました。最初は継続的に再生して敵より長く持ちこたえる案を試しましたが、プレイヤーが戦闘のペースを落としたり、有利を求めて退いたりするようになり、うまくいきませんでした。生存には非常に有効でも、プレイヤーには気づきにくく、目立つ要素にならなかったといいます。
解決の鍵は、怒りと回復能力を結びつけることでした。体力がなくなったときに発動する回復の急上昇「ラストスタンド」は、アドレナリンでローガンの心臓を動かし続けるという設定で、攻撃的な姿勢を促し、生々しい回復を間近で見せる場にもなりました。
怒りは戦闘システムの土台であり、勢いを示す指標でもあります。段階ごとの違いは次のとおりです。
- 怒りが低い段階ではラストスタンドという安全網がなく、状況判断と防御を優先して生存寄りの判断になる
- 中間の段階では余裕が生まれ、長いコンボや連撃で怒りを溜めて素早く倒す選択ができる
- 最大の第3段階では怒りの減りが速く、撃破ペースが最優先になる。遠くの敵より集団を狙うほうが撃破密度が上がる
こうした仕組みに加え、ローガンのアニメーションや消耗の見せ方も精神状態に合わせて変化します。演出とシステム上の動機づけの両方で、ウルヴァリンのように狂乱へ向かわせる設計です。
爪の手触りには特に力を入れたとのことです。爪は切り裂くものなので、敵には部位ごとのダメージ表現を加えています。血は流れると塊になり、人や環境に当たると飛び散り、壁を伝って垂れ、水の中では拡散するなど、細かい挙動も作り込んだそうです。多くの撃破には専用アニメーションがあり、カメラが寄って爪が体を貫く瞬間を捉えます。ときおり手足を切断する場面は、アダマンチウムの爪の鋭さを思い出させる演出です。音と振動の設計も加わり、一撃ごとの手応えを支えています。
殺傷力は、ウルヴァリンが敵を倒す速さと、敵がこちらを倒す速さのバランスです。敵が技巧的で多くの攻撃に耐えると、積極的に大勢を切り裂くというプレイヤーの期待に合わなくなりました。逆に、敵が深刻な脅威に感じられなかったり、少し慎重になるだけで完璧に防御してダメージを避けられたりすると、戦闘の面白さもウルヴァリンらしさも失われたといいます。
そのため、不公平に感じるほど攻撃的な大人数の敵と戦う構成になりました。一流の傭兵であっても1人ではウルヴァリンと渡り合えないので、敵の強みは集団での連携です。それがウルヴァリンの怒りによる勢いの対抗軸になっています。
ザビエルとマグニートーがいない世界について
本作にはX-MENの世界から多くのキャラクターが登場しますが、プロフェッサーXとマグニートーには触れられません。この点について、Daly氏は世界の探求というより、キャラクターの探求だったと答えました。
ローガンが戦いに巻き込まれるのは、使命感のある戦士だからではなく、ほかに選択肢がないからという物語にしたかったそうです。助けてくれるX-MENはいません。賢く支えになる英雄に囲まれて正しい方向へ導かれると、ローガンの成長が苦労して得たものに見えなくなる恐れがあるといいます。対照的に、Team Xの面々とのやり取りは、ローガンの葛藤を表しています。成長を阻む逆境こそが面白さだという考えです。
ジーンは結果的にローガンを正しい方向へ導く存在になります。2人が似た苦しみを経験してきたから成り立つ関係だと説明されました。
報われない恋とザブレトゥースの存在
ジーンとローガンは、さまざまなマーベル作品で特別な絆で結ばれていますが、最終的にジーンはスコット・サマーズを選びます。本作ではその障壁がなくても、ローガンは恋愛でつまずきます。ウルヴァリンは恋が実らないほうが魅力的なのか、という質問に対し、Daly氏は、ローガンの痛みに共感し、それでも進み続ける姿に敬意を抱けるときにウルヴァリンの物語は良くなると答えました。感情面でも肉体面でも同じで、安らぎだけを望みながら長く得られない悲劇的な人物だということです。
ボス戦で戦う相手のうち、開発の初期から必ず戦わせようと決めていたのはザブレトゥースだそうです。ローガンにとってこれ以上の対比役はいないとのことで、内面の混乱と混沌とした行動が、ローガン自身の内なる獣と、それに抗う葛藤を浮かび上がらせます。戦闘でも力とミュータント能力がローガンの鏡になり、その残忍さが強い印象を残す場面を生みます。ザブレトゥースとの壮大な対決は、最初から決まっていたと語られました。