シェパード役の声優2人、BioWare閉鎖後も『Mass Effect』の未来に希望を語る
『Mass Effect』の主人公コマンダー・シェパードの声を担当するMark MeerさんとJennifer Haleさんが、Polygonの取材に応じ、BioWareの閉鎖やコミュニティの力、スタジオの遺産について語りました。BioWare開発の新作『Mass Effect』をプレイできる可能性が低くなったなか、2人は意外にも将来に前向きな姿勢を見せています。
BioWare閉鎖を受けた2人の反応
EAは1年前にBioWareの人員を大幅に削減し、10月21日には残っていた約50人の従業員を解雇しました。これにより、30年にわたるスタジオの歴史に幕が下りました。
Meerさんは、最初に感じたのは「BioWareで働いていたすべての人への悲しみと心配」だったと述べています。BioWareはカナダ、特に拠点のあったエドモントンにとって誇りだったとも話しています。カナダのファンはBioWareを救うよう政府に請願しており、この請願は下院で提出される予定です。つまり、カナダ政府が何らかの形で正式に対応することになります。Meerさんは「ゲーム業界で大きな存在であり、伝説的なスタジオでした」と振り返りました。
Haleさんは、BioWareを「静かで美しい意味で、とてもカナダらしい会社」と評しています。作品は包括的で、伝統に逆らいながらも、声高に主張するのではなく、自分たちのやり方で静かに、しかし見事に業界を前へ進めたといいます。
「閉鎖を聞いて、とても希望を持ちました」
Haleさんが大きな悲しみに襲われたのは、閉鎖の約20年前、BioWareがEAに買収されたときでした。独立して運営できなくなり、株主の意向や予測に左右されるようになったためです。さらに、2025年にサウジアラビアの公共投資基金などの民間投資家へEAが売却されたことは、Haleさんの言う「BioWare本来の精神」とますますかみ合わなくなったとしています。なお、BioWareは動画プレゼンテーションからLGBTQに関連する映像を外すよう求められたと報じられています。
そのためHaleさんは、閉鎖を聞いて「とても希望を持ちました」と語りました。今この状況では「奇妙に聞こえる」と認めたうえで、EAが『Mass Effect』のIPを手放し、ファンが「コミュニティによるファンのためのMass Effect集団」としてIPを所有する未来を思い描いているそうです。コミュニティには優れた開発者やクリエイターがいるからだといいます。「それがすぐに思い浮かんだ夢でした。気分が良くなる空想にすがっていたいのです。何が起こるか分かりませんから」とも述べています。
IPの行方をめぐる見方
BioWareは閉鎖されましたが、『Mass Effect』から『Dragon Age』、Jade Empireまで、すべての資産とフランチャイズは引き続きEAが保有しています。EAが売却による負債の返済のためBioWareのIPを手放すかどうかは、これまで話題になってきました。元BioWareのエグゼクティブであるMark Darrah氏はIP売却の可能性があるとみていますが、元テクニカルディレクターのRomain Toutain氏は、EAが何かを売却する可能性は低いと考えています。
ファンの声と「N7 Day」
閉鎖の衝撃はまだ収まっておらず、ファンはオンラインで悲しみや愛着を伝え続けています。Meerさんは「作品への愛情の表れは見事なものでした」と話しました。2人は請願活動「#SaveMassEffect」(署名は30万件超)を支持していますが、運動の組織上の役割は担っていないとしています。Meerさんは、これは人々がこの世界観をまだ手放す準備ができておらず、続きを見たいと示すものだとの見方を示しました。単に作品がどれだけ大切かを伝えるものだとしても、それも正当だと述べています。
こうした動きは、『Mass Effect』を祝う毎年恒例のイベント「N7 Day」(11月7日)の直前に起きました。シェパードの作中の階級呼称N7にちなむ日で、N7は人類の兵士のなかでも精鋭を意味します。ここ数年は出演者が集まっており、今年も変わりません。Meerさんは、ファンが自ら続けてきたため、N7 Dayはなくならないと考えています。ファンの投稿、とくにコスプレイヤーの投稿を見るのを楽しみにしており、喜んで共有するとのことです。
Haleさんは、「Mass Effectは数年前から、企業の後ろ盾がなくてもコミュニティの力を持っていました。誰も明かりを消したり電気を止めたりしていません。コミュニティそのものが電気だからです」と述べました。現時点で新作が開発されていなくても、『Mass Effect』は独自の命を持っているとしています。
巨大化する業界と、インディーへの期待
数十年にわたり業界に身を置くHaleさんは、BioWare作品には『Mass Effect』以前から出演してきました。Meerさんも同様です。Haleさんは、企業がますます大きくなろうとし、数年前と比べても前例のない速さで互いを吸収・買収している現状を指摘しました。その規模では「創造的な方向転換はとても難しい」と話しています。
この状況を、モバイルゲームSlither.ioにたとえました。ヘビを操作して他のヘビを食べて大きくなるものの、大きくなりすぎるとやられやすくなるゲームです。「そのあとは小さな虫たちが主導権を握ります。それに似ています」と語っています。Haleさんは、インディースタジオがその「小さな虫たち」になることを期待しています。
実際の動きもあります。『Mass Effect』のディレクターだったCasey Hudson氏は、BioWareを離れたのち、同じエドモントンのArcanaut Studiosを共同設立し、同社のStar Wars: Fate of the Old Republicを手がけています。また、来年発売のExodusは、BioWareの元スタッフが多く在籍するArchetype Entertainmentの最初の作品です。
Meerさんは、こうした作品などがBioWareの流れを受け継ぐとし、「ストーリーテリングや物語性のあるゲームを求める声は本当に強い」と述べました。BioWareの遺産として、豊かな物語と「人々が心に深く受け止めたキャラクター」を挙げています。スタジオがなくなっても、Garrus、Tali、Joker、Liaraといったキャラクターとプレイヤーが築いた思い出は残ります。
Meerさんは最後に「物事には季節があります。『Mass Effect』の季節がまた来ることを願っています」と語りました。