『1666: Amsterdam』は魔女の力と住居探索を組み合わせた異色作
2026年09月07日 | #レビュー | Eurogamer
魔女の力で人々を操り、17世紀のアムステルダムにある家々へ忍び込む『1666: Amsterdam』は、一般的なアクションゲームとはかなり異なる方向性を持っています。AIやバグ、粗いキャラクターモデルなど、アーリーアクセス版としても厳しい部分が目立つ一方、建物の内外を行き来しながら情報を集めるゲームプレイには、ほかでは味わいにくい魅力があります。原文筆者は、遊びにくさや不可解さを抱えた本作が、野心的な設計によって独特の面白さにたどり着いていると評価しています。
厳しい完成度と、そこから生まれる奇妙さ
原文筆者が本作を語るうえで引き合いに出しているのは、映画監督サム・ライミの若い頃の自主制作映画です。幼いライミが友人と撮った映像では、カーペットの上に置かれた兵隊の玩具と、ライミ本人たちの姿が編集でつながれていました。しかし、観客には「本人たちが玩具の兵隊を表現している」という意図が伝わらなかったといいます。作品が悪いと理解してもらう以前に、何を見せられているのか分からない状態だったという話です。
原文筆者は、本作にも同じ種類の戸惑いがあるとしています。序盤には、1990年代のアムステルダムにあるブティックホテルを、ほとんど裸の状態で歩き回る場面があります。目指す屋外エリアへ向かおうとすると、低解像度の人物モデルで構成された集団がドアの前をふさぎます。彼らは表情を変えず、ほとんど動かず、同じ人物モデルが集団内に複数配置されていることもあります。
夢なのか、取りつかれた人々なのか、現実とは異なる空間なのか。原文筆者は当初、この場面から何を受け取ればいいのか分からなかったそうです。ただ、後から考えると、これはプレイヤーを特定のパズルへ誘導するための仕組みだった可能性が高いとしています。本来進めないドアを群衆で封鎖し、限られたルートへ導く必要がある一方、小規模なチームと限られた予算では高品質な人物モデルや複雑なアニメーションを用意できず、同じモデルを並べる形になったのではないか、という見立てです。
こうした場面は意図的なシュールレアリズムと、開発上の制約による不自然さが混ざり合っています。原文筆者は、本作が「悪い」というより、野心的な計画を実現しようとした結果として全体が伸びすぎていると説明しています。魔術を扱う作品の中に、意図された奇妙さだけでなく、技術的な事情から生まれた偶然の奇妙さも入り込んでいるわけです。
アーリーアクセス版の問題点
現行のアーリーアクセス版には、約15時間分の内容が収録されていると原文筆者は説明しています。プレイ時点では約6時間を費やし、最初の本格的なミッションの終盤に差しかかっていました。オンラインでは、現状の粗さでアーリーアクセスに入るのは早すぎるという意見も多いとのことです。原文筆者も、その指摘は妥当だと認めています。
AIの挙動は満足できるものではなく、バグや荒削りな部分も少なくありません。プレイヤーが操作する猫が地形の内部に落ちて動けなくなり、ゲームを終了して再起動しなければならないことが何度もあったそうです。アムステルダムの通りを歩く人々は動いているものの、同じ人物が複製されたように見えることがあり、街が双子や三つ子で満たされているような状態になります。
人物の当たり判定も一貫していません。ほとんどの市民は衝突判定が無効になっているように見える一方、特定の人物には判定があり、その基準も明確ではないと原文筆者は述べています。クラッシュも発生しており、現時点で完成度に大きな期待を寄せるのは難しい状態です。
ただし、原文筆者は小規模なチームが複雑で大胆な設計のゲームを作っている点にも触れています。開発を続けるためには、アーリーアクセスを通じて資金を得る必要がある場合もあるという見方です。つまり本作を遊ぶことは、完成度の低さを受け入れる代わりに、まだ形を変えうる野心的な作品に触れる取引でもあります。
暗殺者ではなく、身を隠す魔女
本作は、現在に生きる人物が過去の人物を学ぶ構成になっており、現代、1990年代、1666年という3つの時代を行き来します。17世紀のパートでは、フードで顔を隠したノアを操作し、街の標的を追跡して排除していきます。この設定だけを聞くと、過去の都市を舞台にした暗殺ゲームとして、Assassin's Creedに近い印象を受けるかもしれません。
しかし、原文筆者はその見方が本作を理解するうえで適切ではないとしています。ノアは暗殺者のような役割を担うものの、中心にあるのは魔女としての能力です。人目を避けて運河を移動したり、必要な場面で杖を使って戦ったりはできますが、建物を自在に登り、壁を走り、上空から敵を急襲するような行動はできません。魔女であることを隠しながら、目立たないように街を移動する必要があります。
最初の本格的なミッションでは、魔女に対して特に厳しい検察官が標的になります。街の人々の会話を聞き、裁判の情報を集めることで相手の正体を推測し、標的を特定した後は、その人物が悪魔と関係していることを示す証拠を探します。証拠がそろうと、最後にボス戦へ移行する流れです。
一方、戦闘については厳しい評価が示されています。ノアは数回攻撃を受けるだけで倒されるほど打たれ弱く、距離を取るためのダッシュが非常に便利です。そのため、特殊攻撃や魔女の力で環境を利用する複雑な選択肢よりも、木の杖で敵を殴り、すぐにダッシュで離れる戦法に偏ってしまいます。失敗したときの負担が大きいため、安全策を選びたくなり、結果として戦闘のバランスが崩れているというのが原文筆者の見解です。
家の内部を使った潜入パズル
本作で最も評価されているのは、戦闘の合間に行う探索と潜入です。1度に広大な都市全体を扱うのではなく、アムステルダムの一地区を舞台にしながら、建物の外観だけでなく内部まで細かく作り込んでいます。原文筆者は、意図せずイマーシブシムに近づいたゲームのようだと表現しており、多くのドアを実際に通り抜け、その先に何があるのか確認できる点を特徴に挙げています。
標的の家に侵入する場面では、家の中を調べて証拠を探します。しかし、目的の建物は複数階にまたがる大きな邸宅で、警備も厳重です。ノア本人が正面から入るのは現実的ではないため、魔女の猫を使うことになります。
猫は雨どいを登り、足場から足場へ飛び移ることができます。ネズミなどの害獣がいる街では、猫は人間よりも自然に建物を移動できる存在です。警備員の足元をくぐり抜けながら、台所、食堂、寝室などを調べ、家の構造を把握していきます。
ただし、重要な部屋には鍵がかかっています。そこでプレイヤーは、建物の外周にある足場や上階の窓を利用し、別の部屋へ回り込む方法を見つけます。猫を建物の内部へ入れた後は、内側からドアを開けられるため、外と内をつなぐ経路を組み立てることが重要になります。単に目的地へ向かうのではなく、建物そのものを立体的なパズルとして読み解く仕組みです。
さらに、猫を見て怯える反応を示した警備員には、魔女の力で憑依できます。憑依した警備員を操作すれば、別の場所へ移動したり、他の警備員を殴って排除したりできます。なかにはノアを邸宅の内部へ招き入れられる警備員もおり、その力を使うことでノア本人が室内を歩き、引き出しなどから証拠を探せるようになります。
原文筆者は、貴族らしい人物が猫と激しく殴り合う場面など、仕組みとしては複雑でありながら見た目には滑稽な瞬間もあるとしています。それでも、他人の家に忍び込み、鍵のかかった部屋をどう開けるか考える不正な空間探索には、確かな楽しさがあるとのことです。
オランダ黄金時代の絵画を歩く体験
この潜入システムが印象に残る理由として、原文筆者は舞台の美術表現にも注目しています。ゲームの冒頭では、果物や野菜など日用品を描いた静物画が登場します。画家アドリアーン・コールテの作品を思わせる構図では、アスパラガスが巨大で神々しい存在のように描かれ、リンゴや洋ナシも未知の惑星のように見えると説明されています。
街へ出ると、複雑な窓、赤いレンガ、小さなアーチや出入り口が続きます。原文筆者は、フェルメールやレンブラントの絵画を少しでも知っていれば、こうした建築や室内が丁寧に観察されていることに気づくはずだとしています。実際の人生では訪れたことのない過去を、油彩画を通して見てきた記憶のように感じながら歩く体験です。
オランダ黄金時代の美術は、家庭や室内にある物へ強い関心を向けました。商人や交易に支えられた時代において、家の中身は、そこに住む人物が何者なのか、あるいは何者として見られたいのかを示す手がかりになります。本作では、まさにその家の中へ入り、家具や部屋の構成、置かれた品々を手がかりに人物の秘密を探ります。
原文筆者は、絵画が切り取った過去の室内を歩いてみたいという感覚を、本作が部分的に実現していると述べています。建物の内部へ侵入して証拠を探すゲームプレイと、オランダ黄金時代の室内美術への関心が結びつくことで、単なる舞台の再現以上の意味が生まれています。
現段階では、戦闘のバランス、AI、バグ、重複する人物モデルなど、楽しさを損なう要素が多く残されています。それでも、魔女の猫や憑依能力を使って家の内部を攻略する仕組みと、絵画から抜け出したような街並みは、原文筆者にとって本作を遊び続ける理由になりました。すべてがうまく機能しているわけではないからこそ、完成された既存ジャンルにはない、不安定で奇妙な魅力を持つ作品だとまとめています。