『Silent Hill: Townfall』がステルス重視のサバイバルホラーとしてシリーズを刷新
2026年09月21日 | #レビュー | Eurogamer
『Silent Hill: Townfall』は、シリーズおなじみの霧と異界のイメージを、1996年の北海に浮かぶスコットランドの島へ移し替えた作品です。Screen Burnは、正面から敵を倒すよりも身を隠して進む緊張感と、地域社会の崩壊や労働者の搾取をめぐる社会的な題材を組み合わせ、従来とは異なるサバイバルホラーに仕上げています。原文筆者は、緊張が長く続きすぎる場面や終盤の冗長さを問題点に挙げながらも、シリーズの再解釈として非常に野心的で、不穏さに満ちた作品だと評価しています。
スコットランドの町を舞台にした新たなサイレントヒル
物語の舞台は、北海の離島にある小さな町St. Ameliaです。主人公のSimon Cordellは、曇天の下で海から這い上がります。肩には点滴袋がテープで固定され、チューブが手元まで伸びているものの、なぜそこにいるのかは分かりません。海辺から町へ進むと、英国らしい道路標識、点滅する横断歩道、商店街を彩る飾り、地域の掲示板など、土地の生活感を伝える細部が積み重ねられています。
町の中心には郵便局、新聞販売店、ビデオ店などが並び、石畳の市場広場へと通じる細い通りが続きます。しかし、景観がのどかに見える一方で、建物には売却を知らせる看板や閉店を示す掲示が目立ちます。霧が現れる以前から、町の経済やコミュニティが衰退していたことが、説明台詞に頼らず伝わる構成です。その外側には石造りの集合住宅、荒れたビアガーデンを備えたパブ、道路沿いのカフェが広がり、後半には1970年代風の無機質な建築も姿を見せます。
原文筆者は、St. Ameliaそのものが登場人物の1人に近い存在感を持つとしています。Screen Burnは、シリーズの象徴的な場所をそのまま再現するのではなく、英国の文化や社会状況に合わせて置き換えました。白く清潔な病院は狭いNHSの病棟となり、広々としたショッピングモールはコンクリート造りの商業施設へ変化します。かつて産業で栄えた地域と、分断された住民の姿を背景に、町は悲劇によって決定的に傷ついています。
本作の恐怖は、異形の怪物だけから生まれるものではありません。企業による地域の収奪や労働者の搾取といった問題が物語の根底にあり、社会の現実が怪異を支える土台になっています。原文筆者は、従来のシリーズ作品に登場した看護師の怪物を例に挙げ、本作では単純な性的イメージの怪物ではなく、凄惨な死者を目の当たりにしたトラウマを抱えるエッセンシャルワーカーとして描かれていると説明しています。恐怖を現実の怒りと結び付けることで、物語に一貫した感情の流れを与えているという見方です。
一人称視点とCRTVが生むステルスの緊張感
序盤のゆっくりした展開を抜けると、ゲームは一人称視点へ移行します。シリーズの多くの作品で採用されてきた三人称視点と比べて周囲を見渡しにくく、プレイヤーは常に無防備な感覚を抱えたまま進むことになります。戦闘は存在しますが、中心となるのは敵を倒すことではなく、巡回を避け、音や遮蔽物を頼りに危険地帯を通り抜ける行動です。
敵は、腫瘍のような肉塊から斧に似た頭部を突き出すものや、ただれた傷口から注射器のような器官を伸ばすものなど、強い攻撃性を持っています。接近されると大きなダメージを受け、複数の敵との戦闘は危険です。Simonが使える近接攻撃は不格好なガードや乱暴な殴打が中心で、木の板などの武器は心もとありません。後にリボルバーを入手すると敵を止める力は大きくなりますが、再装填には長い時間がかかり、銃声は広い範囲の敵を引き寄せます。銃が手に入っても、力押しが最善の選択になるわけではありません。
そこで重要になるのが、ゲームボーイと小型テレビを組み合わせたような携帯端末CRTVです。敵のいる区域に入ると、最初に短いノイズが聞こえ、ダイヤルに新たな信号が追加されます。信号を合わせると、その電波に対応する巡回中の敵が、赤いノイズの揺らめく画面の中にシルエットとして表示されます。ただし、画面から分かるのは敵の姿と動きだけで、周囲の地形や遮蔽物の位置までは把握できません。
この仕組みにより、敵がどこかにいることは分かっていても、その敵が巡回する範囲の全体像は分からないという状況が作られます。原文筆者は、敵の視点を垣間見ながら危険地帯の断片的な情報を集めるホラーゲームSirenを連想したとしています。プレイヤーは不完全な地図と推測だけを頼りに先へ進み、最初から安全な攻略ルートを組み立てることはできません。
完全に無力というわけではありません。石や瓶を投げれば敵を一時的にひるませたり、巡回ルートから誘導したりできます。回復アイテムに加え、Simonの点滴も満たしておけば、倒れた際の復活に利用できます。とはいえ、こうした手段は戦闘を安定させるものではなく、危険を一度だけ切り抜けるための保険に近い存在です。
複数の視点で変化する探索ルール
物語はSimonだけを追う構成ではありません。彼が自分の物語の中でどのような役割を担っているのかは、プロローグの段階で予想できる部分があると原文筆者は述べています。大きなどんでん返しを連続させるのではなく、罪悪感や悲嘆が人から人へつながっていく構造を描くことに重点が置かれています。また、Simon以外にも操作可能なキャラクターが登場し、同じ出来事を異なる立場から見ることで物語の厚みを増しています。
別のキャラクターを操作している間はCRTVが使えません。これまで敵の位置を把握するために頼っていた安全策が突然なくなり、角から慎重にのぞく、物音に耳を澄ます、遠くの街灯の明滅から敵の通過を読むといった、より直接的なステルスを求められます。広いマップでは複数の目的が交差し、狭い場所から開けた道路へ、さらに別の建物へと移動させられます。プレイヤーが1つの進み方に慣れたころ、ゲームは別のルールを突きつけてきます。
後半には、死体で覆われた場所を何度も往復する長い場面があります。原文筆者は、Silent Hill 2のリメイク版に登場する刑務所の区画さえ、ここでは気楽な散歩に感じられるほどだと表現しています。地形を見分けにくい不穏な環境を行き来し、わずかな違いを探しながら進む構成で、緊張はほとんど途切れません。その後には、一時的に圧倒的な力を得られるように見せかけてから、暗闇の中でジャンプスケアを避け続ける展開へ急転する場面もあります。
異界の表現と評価を分けた終盤の構成
各章では、町の雰囲気も大きく変化します。昼の景色が照明を切り替えたように夜へ変わり、黄色い街灯が霧を不快な色に染める場面があります。シリーズでおなじみの錆びた異界は、硬質なコンクリートの迷路へと置き換えられ、輸血を思わせる赤や救急車の青で照らされます。空が真紅に染まり、巨大な工業用パイプが見慣れた町を切り裂く光景も登場します。
音楽では、シリーズの音楽を長年支えてきたAkira Yamaokaとは別に、Anthony Scott Burnsが作曲を担当します。原文筆者によれば、メランコリックなシンセサウンドや工業的な轟音といったシリーズらしい質感を保ちながら、独自の美しさと暴力性も備えています。映像と音の変化によって、同じ町を歩いているにもかかわらず、章ごとに異なる恐怖へ踏み込んでいく感覚が作られています。
一方で、原文筆者が大きな弱点として挙げるのが、全体のリズムです。シリーズにおける霧の世界と異界の切り替えは、見た目を変えるだけでなく、強い緊張をいったん緩める役割も担ってきました。しかし本作は、序盤の静かな章を終えると、ほぼ最後まで高い緊張状態を維持します。ステルスの合間には、テキストアドベンチャーを思わせる仕掛けや、時間の変化によって家の構造が移り変わるパズルが用意されています。環境そのものから物語を読み取らせる作りは巧みですが、謎を解いている最中にも敵との遭遇が続くため、落ち着いて考えられる時間は限られます。
プレイ時間は約15時間で、その間ずっと感情的な負荷が続くため、原文筆者は「少し執拗すぎる」と指摘しています。章自体がやや長く、終盤になるほど緊張を解放する場面が不足していることが目立ちます。特に最後の章は、舞台となる場所の作り込みが比較的平板で、細かな敵との遭遇を挟んだ過剰な後戻りや、意図が読み取りにくいパズルが重なります。物語が解決へ向かうべきタイミングで進行が引き延ばされ、勢いを失ってしまうという評価です。
それでも最終的には立て直し、5種類あるエンディングの1つへ到達します。原文筆者は、その結末が本作らしく、シリーズらしい余韻を残すものだとしつつ、そこへ至るまでにScreen Burnが主張を十分すぎるほど繰り返しているようにも感じたと述べています。欠点はあるものの、シリーズの過去をなぞるだけではなく、舞台、視点、社会的テーマ、ステルスの仕組みを大胆に組み替えた点は高く評価されています。原文筆者は、かつて存在感を失いかけていたシリーズが、異なる感性を持つ開発スタジオによって予想外の方向へ広がっていると結論付けています。