『ゼルダの伝説 時のオカリナ』リメイクを未プレイの筆者が2時間体験、森の神殿に見えた後続作品へ続く設計の源流
Switch 2向けにリメイクされる『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のデモを、原作をほぼ遊んだことのないIGNの筆者が約2時間プレイしました。結論は、懐かしさに頼らなくても十分に楽しめる冒険だったというものです。その最大の理由は、フォレストテンプルに詰まった謎解きと戦闘の設計が、今遊んでも新鮮で、後の多くの作品につながっていることが実感できた点にあります。発売は11月5日です。なお今回は短時間の体験版に基づく印象記で、スコアは付いていません。
未プレイの筆者にとっての「デジタル考古学」
筆者は、1975年の夏に映画『ジョーズ』を劇場で観た体験は決して味わえないものの、50年後の今でもIMAXや4Kブルーレイで楽しめることを例に挙げています。作品が文化に登場した瞬間に立ち会う体験は再現できませんが、保存やリマスター、リメイクによって新しい世代も名作に触れられるという考えです。今回のデモ体験は、筆者にとって「デジタル考古学」のようなものでした。
筆者は『時のオカリナ』を遊んだことがありません。約10年前に3DS版の冒頭1時間ほどを触った程度で、Nintendo 64も持っていなかったとのことです。その後はほかのゼルダ作品を複数遊んでおり、『ティアーズ オブ ザ キングダム』をオープンワールド設計の傑作と評価しつつ、心の中で最も近いのは『風のタクト』だと述べています。
今回のデモでは、コキリの森、ハイラル城下町を歩き、フォレストテンプルをクリアするところまで遊べました。筆者は、この短い体験でも自分が好きなゲームの要素が随所に見え、1998年当時に他の開発者へ与えたであろう刺激も想像できたと語っています。何より「とにかく楽しかった」というのが率直な感想です。
フォレストテンプルに見える設計の「貸し出し文庫」
筆者が最も強く感じたのは、任天堂が3Dゲーム設計の「貸し出し文庫」のような存在になっているという点で、それを最も実感できたのがフォレストテンプルでした。Rockstar Gamesの共同創設者ダン・ハウザー氏は、ニューヨーク・タイムズに「3Dゲームを作る人間で、マリオやゼルダから何も借りていないと言う者は嘘つきだ。今のゲームではなく、Nintendo 64のゲームからの話だが」と語っています。筆者はこの指摘に反論できないとしています。
神殿は幽霊屋敷のような雰囲気で、入り組んだ通路を解きほぐしながら秘密を探っていく構成です。部屋はどれも謎解きになっており、重い石のブロックを動かして道を開ける昔ながらの仕掛けもあれば、道具を使いこなす戦闘の課題もあります。
戦闘は難しすぎないものの、よくできていると筆者は評価しています。剣と盾を持った大柄なスケルトンが行動に反応してくるため、タイミングのよい回避やスタンで応じる必要があります。敵がこちらの動きを読み、プレイヤーが適切に切り返すというじゃんけんのようなリズムに、筆者は『バットマン:アーカム』シリーズの格闘の原型を見ています。
神殿全体の構造からは、『ダークソウル』のように道が絡み合い、近道を開けていくレベルデザインを思い出したそうです。どの道も中央の部屋に戻ってきて、4色の炎に火をともすとボスへの道が現れます。何をすべきかは示しつつ、手取り足取りは教えない作りが見事だと筆者は述べ、この思考の自由度は『ティアーズ オブ ザ キングダム』の建築システムまで続くゼルダの特徴だとしています。
試行錯誤が報われる謎解きとボス戦
攻略のヒントは小出しに与えられます。柵の向こうや高い足場の上など、届かない場所にスイッチが見えており、廊下を回転させて神殿の構造そのものを変えられることに気づくと道が開けます。筆者はこれを『Dishonored 2』のクロックワーク・マンションの原型のようだと表現しています。『Fez』のようにこの種の仕組みでゲーム全体を作った作品もある中、ここでは1時間足らずしか使われません。筆者は、こうした発想が今もゲームに響いていることに任天堂の発想力の持続を感じたとしています。
筆者は神殿の単純さを楽しみつつ、子ども向けに感じるほど簡単ではない、頭をくすぐる加減だったと評価しています。長年ゲームを遊んできた経験で自然に解ける場面もあります。たとえば、凍った的の近くで炎が燃えているなら、矢を炎に通して氷を溶かす場面です。一方で、先に進むために神殿の4体の精霊を弓で絵から落とす必要があることには気づけず、立ち止まったそうです。それでも試しに撃ってみたら通じたと言い、この「試したら通った」という体験こそ、ゼルダ初の3D作品で確立されたものだと見ています。
ボスのファントムガノンが力比べではなく、謎解きだったことも嬉しい驚きでした。筆者は、反射神経を試すだけではなく解き明かす対象として戦うボスが好みで、『ワンダと巨像』の巨像や『エルデンリング』のレナラを例に挙げています。周囲の絵から馬に乗って突進してくる複数の敵のうち本物を見極め、タイミングよく弾き返して倒す戦いは、まさにその系統でした。
ジャンプボタンの追加と、古さを感じない操作感
リメイクの大きな変更点として、ジャンプボタンの追加があります。原作のリンクは、開発者が決めた特定の隙間を自動で飛び越えるだけでした。これは任天堂の2大シリーズを差別化するための判断だったといいます。原作の開発に携わり、現在は任天堂の上席執行役員でNintendo Directの司会も務める小泉歓晃氏は「社長が訊く」で、『スーパーマリオ64』を作りながらずっとゼルダのことを考えており、ゼルダはアクション要素を減らしてパズル要素を増やす方向になったと説明しています。
近年のゼルダはパズルよりアクションを重視する傾向にあるため、ジャンプの追加は自然だと筆者は考えています。リメイク版のリンクは、『ブレス オブ ザ ワイルド』や『ティアーズ オブ ザ キングダム』のリンクに近い感覚で動かせ、探索でも戦闘でも反応のよさを感じたそうです。戦闘は注目システムによる一対一の形式が今も使われているため、特になじみ深かったとのことです。初めて入った神殿でも多くの操作が自然に感じられたことに、筆者は驚いています。任天堂と、その後のほぼすべての開発者が研究し磨いてきた「コード」が透けて見えるようだ、という表現です。
『ジョーズ』の影響が『ノープ』や『ゴジラ-1.0』に見られるように、『時のオカリナ』の影響は近年のゼルダやアドベンチャーゲーム全般に感じられます。ただ、筆者はそれが頭で分かっていたとしても、やはりスピルバーグの作品が最も印象に残るのと同じで、元になった作品の魅力は色あせないと語ります。数時間遊んだだけで全体への評価を決めるのは早すぎるとしつつ、リメイクの解釈であっても、約30年前の発想の集まりに古さを感じるだろうという予想は外れ、「新しく生み出された魔法に満ちている」と述べています。
他の名作とのつながり、そして購入の勧め
任天堂にも先行する着想元があります。筆者は、3Dゲームがリンクの64デビューより何年も前にPlayStationなどで登場していたことを認めたうえで、神殿のねじれた廊下に初代『バイオハザード』のスペンサー邸との類似を見ています。ホラーに怯えるより笑い飛ばしたい観客向けに作り直されたようだという見立てです。1996年のカプコンの館から、1998年の任天堂の神殿、2001年のRockstarのリバティーシティへと、開発者が探索できる広い空間の作り方を学んでいく流れが見えると筆者は述べています。Rockstarの最新作『GTA 6』のレオニーダがリメイク版の発売の数日後に登場するのも、偶然ながら象徴的だそうです。規模はまるで違っても、どちらも記念碑的な作品だという位置づけです。
筆者は、子どもの頃から遊んできた何百万人もの人々にとってのような特別な位置づけには、自分にとってこの作品がならないだろうとも認めています。それでも、その分を補って余りある魅力があるとしています。短い体験からでも、全編をむさぼるように遊びたくなる、隙のない設計の冒険だと分かったそうです。
原作を未プレイでも、後に影響を受けた作品を遊んでいれば、どこか懐かしい親しみを感じられると筆者は語ります。自分と同じようにこの名作を逃してきた人には、今回こそ見逃さないことを勧めています。発売日の11月5日に、すべての場面を自分の手で味わうのが待ち遠しいとのことです。