宮本茂氏が語る『スーパーマリオブラザーズ』最大の発明、ボスのクッパと戦わないという発想
2026年10月25日 | #ゲーム紹介 | Polygon
1985年発売のファミコン用ソフト『スーパーマリオブラザーズ』は、史上最高のゲームの1つとして広く知られています。シリーズの生みの親である宮本茂氏は、そうした功績のどれでもなく、別の点こそが本作の最大の貢献だと考えているようです。最近開かれた記者会見での発言から、その中身を紹介します。
数々の功績を持つ名作
『スーパーマリオブラザーズ』は任天堂を広く知られる存在にし、マリオをミッキーマウスのように誰もが知るメディアのアイコンへと押し上げました。ゲームを一般層へ広げる役割を果たし、プラットフォームゲームというジャンルを定義した作品でもあります。今も、歴代で最も売れたゲームの1つです。
宮本氏はゼルダやドンキーコングなどでも知られる人物で、このたび画家やノーベル賞受賞者のような人々に贈られることが多い日本の権威ある文化的な賞を受けました。受賞後には長い記者会見が行われ、約50年に及ぶキャリアにまつわる数々の逸話が語られました。その中で、『スーパーマリオブラザーズ』の制作や、発売から数十年を経た今の見方についても話がありました。
「陸・海・空」から生まれた基本動作
宮本氏は、シリーズの基本となる動作を「陸・海・空」、つまり走る、飛ぶ、泳ぐという発想で考えていたと振り返っています。
「子どもの頃は、窓の外を眺めて指をさしながら、人が走ったり、飛んだり、川に落ちたりするのを想像していました。スーパーマリオでは、それを実際にできるんです」
ボスと戦わないという発明
続いて宮本氏は、本作で最も大きな発明、いちばん興味深い点は何かを語りました。それは、マリオが実際にはクッパと戦っていないことだといいます。
「普通は、最後にボスがいたら戦わなければいけませんよね」
宮本氏によると、開発時の任天堂は、一般的なボス戦をうまく設計できずに苦労していたそうです。
「ずっと右へ走り続けるゲームなのだから、いちばん右に着いた人が勝ちにすればいいのではないか、と考えました。そこで、戦うのではなく相手を飛び越えればいい、というひらめきがあったんです。クッパを飛び越えるだけで、クッパは落ちていきます。試してみるととても面白く、それに気づいたときは本当にうれしかったです」
戦いを前提としないマリオ像
最近のマリオ作品では、プレイヤーが積極的にクッパと戦う場面もあります。それでも任天堂は、マリオは本質的に暴力的な人物ではないという立場を保っています。マリオがクリボーを奈落へ投げ落とすことがあっても、マリオとクッパの永遠の戦いを芝居のようなものと受け止めるプレイヤーもいます。この見立てによって、2人が他のゲームで手を組むことがある理由も説明できます。マリオが銃を持ったMario + Rabbids Kingdom Battleのように、この方針から外れる場合は、キャラクターにふさわしいかどうかについて長い議論が先行するのが通例です。
宮本氏の言う通り、発売から41年が経った今でも、ゲームは面白いボス戦を作ることに苦労しています。大作の多くは戦闘を重視しており、その意味で初代マリオは、争いの決着のつけ方として今なお珍しい作品だといえます。