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『The Wolf Among Us Remastered』レビュー。終盤のテンポ低下と硬い動きは残るも、作り込まれた背景が物語の陰鬱な空気を深める

2026年10月27日 | #レビュー | IGN

『The Wolf Among Us Remastered』レビュー。終盤のテンポ低下と硬い動きは残るも、作り込まれた背景が物語の陰鬱な空気を深める

2013年の登場時に、海外の高評価ドラマに匹敵すると称賛されたTelltale Gamesの名作が、リマスター版として帰ってきました。背景の美術を一新し、開発の舞台裏を知れるコンテンツも加わっています。一方で、元のゲームにあった硬くてときに不気味な動きは直っておらず、決定版と呼ぶには惜しい出来です。それでも物語は変わらず素晴らしく、描き込まれた背景がその不穏な雰囲気をいっそう深めています。

童話の住人たちが暮らす街で殺人事件を追う

未プレイの人に向けて説明すると、本作はBill Willinghamの人気グラフィックノベル『Fables』をもとにしています。童話の登場人物たちが、ニューヨーク郊外のFabletownで人間に隠れて暮らすという設定です。本作は約20年前を描く非正史の前日譚で、古典的なノワールの語り口を取り入れています。プレイヤーは保安官Bigby(童話の「大きな悪いオオカミ」)となり、奇妙で引き込まれる殺人事件を追います。

自宅の玄関先に首が置かれ、手がかりはリボンと刻印入りの指輪だけ。Bigbyは鋭い嗅覚と観察力で犯人を突き止めなければならず、しかも急ぐ必要があります。人間側も事件を調べており、失敗すれば住人たちの秘密の共同体が崩壊しかねないからです。

さらにBigbyは、長年悪役として暴力を振るってきた過去から、住民に信用されていません。常に行動を見張られるなか、Snow White、The Little Mermaid、『オズの魔法使い』のBufkinといったおなじみの顔ぶれを頼りに捜査を進めます。その先には、階級意識、貧困、権力の乱用といった複雑な問題が見えてきます。物語には終始、深く引き込まれます。

選択が積み重なる会話と調査

ゲームは大きく3種類のパートに分かれます。中心は三人称視点の会話で、制限時間が迫るなか、いくつかの返答から選びます。何かを隠していそうな証人を脅して口を割らせることも、それでも駄目なら暴力に訴えることもできます(自分の倫理観に合えば、という前提です)。会話の言葉は童話の原作を踏まえつつ、野暮ったくなりません。Witching WellやMagic Mirrorといった用語が出てきても感情のこもったやり取りが保たれており、これは脚本の力と、出演者の心に残る演技のおかげだと評されています。

こうした選択には反応が返ってきます。ある決断をすると、相手がその行動を覚えているという警告が表示されます。この種のゲームではおなじみの仕組みです。たとえば何かを届けると約束して果たさなければ、次に会ったとき相手から厳しい言葉を浴びるかもしれません。本作は犯人探しであると同時に、Bigbyが悪役の過去を振り払い、保安官として守る側に立てるのかを選ぶ物語でもあります。

その選択はおおむね自分次第です。住民を冷酷に追い詰めて答えを引き出すことも、法の立場に背いてでも住民の味方をしようとすることもできます。このグレーな領域を探るうち、筆者はFabletownの住人がなぜそう行動するのかを理解し、どれほど切羽詰まった、あるいは堕落した行為でも共感できるようになったといいます。

会話の合間には、Bigbyを直接操作して場末のバーや豪華なオフィスなどを調べ、手がかりを探します。ここにも倫理的な問いがあります。葬儀の場に冷淡に踏み込むのか、ノックせずにドアを蹴破るのか、といった具合です。善悪の境目があいまいになるなか、筆者は特に挑発されたとき、善人らしくあろうとするのに苦労したそうです。明らかな悪党を殴れば早く答えが得られますが、それでは相手と同じになってしまうのではないか、と悩んだといいます。

3つめは、クイックタイムイベントによる操作パートです。物語の山場で、喉を引き裂く、街区を飛び越える、折れた骨を整えるといった場面があり、失敗するとゲームオーバーになることもあります。ただしチェックポイントが多く、ミスしてもすぐ再開できます。種類と頻度が十分で、犯人の正体を探る合間に飽きさせません。魅力的で、ときに残酷な演出が付くものも多くあります。

終盤で落ちるテンポと、作り込まれた舞台

本作は元のゲームと同じ流れで、1話約2時間の全5話構成です。かつては話ごとの販売でしたが、今回は1本にまとめて収録されています。選択の影響が感じられる場面が多く、物語は勢いよく進みます。

ところが4話目に入ると、テンポが急に落ちます。登場人物が同じ主張を必要以上に繰り返すのです。序盤は犯人を探してあらゆる場所を調べ、4話では筆者も状況をほぼ理解していました。そのため、結末を迎える準備ができた時点で進みが鈍ることに、やや噛み合わなさを感じたそうです。

筆者は、この章を大きく変えなかった理由に理解を示しています。本作はリメイクではなくリマスターであり、大幅な改変は、うまくいかなければかえって害になりかねないからです。この回にも楽しい会話はあり、終盤の展開には引き戻されたとも述べています。全体として緊密に作られているだけに、苦労して集めた情報を2時間近くかけて振り返らされるのは、やはり少しもどかしいとしています。

この不満をやわらげるのが、各場所の作り込みです。訪れる場所はどれも意図的に設計され、住人の人柄をよく映しています。Bigbyの狭くて家具の少ない部屋は一匹狼の暮らしにふさわしく、行きつけの酒場は粗削りながら温かく、落ちぶれた常連客によく合っています。リマスターではこうした環境による語りがさらに強まりました。ソファの布地から質屋の骨董品まで、細部が大幅に描き込み直されています。たとえばAunt Greenleafの部屋は、吊り飾りや散らばった珍品が増え、以前より魔女らしくなりました。悪名高いPuddin 'n' Pieも、アール・ヌーヴォー風のペンダントライトと派手なネオン管によって、いかがわしさと洒落た雰囲気を保っています。

見た目にこれだけ力が入っている分、すべての細部が同じように磨かれていないのは残念です。技術面の引っかかりも残っています。キャラクターが回転台に乗ったように動くことがあり、Bigbyが手がかりを調べる動きも不自然に硬く、ロボットのように見える場面があります。2013年の原作なら許せた粗も、2026年のリマスターでは目立ちます。ほかの磨き込みを台無しにするほど気を散らすわけではないものの、こうした部分も滑らかにして、決定版と言い切れる内容にしてほしかった、というのが筆者の見方です。

裏側をのぞけるおまけ要素

本作には、DVDの特典映像を思わせるおまけも多く収録されています。物語を白黒で遊べるNoirモード、旧アートと新アートを比べられるデジタルギャラリー、開発者や出演者のメイキングインタビューなどです。設定資料まで漁りたい筆者にとって、どれも楽しく見て回れる内容でした。ただしインターフェースはやや古めかしく、実用性より懐かしさに寄っているといいます。

最も魅力的なのは、遊べる没シーンがいくつか入っていることです。粗削りではあるものの、興味深いプロットの糸口や分岐が見え、エンドロールの後に体験すると興奮するとしています。

総評

『The Wolf Among Us Remastered』は、Telltaleの名作エピソード型アドベンチャーを刷新し、もとから鮮やかだった世界にネオンの輝きを加えました。終盤にはテンポの落ち込みが残るものの、繊細な演技と手に汗握るクイックタイムイベントが、犯人に迫るプレイヤーを再び引き込みます。元の硬い動きが直っていないのは残念ですが、見事な背景の作り直しと充実したおまけがそれを補って余りあります。決定版とまでは言えないものの、本作がなぜ高く評価されたのかを思い出させてくれるリマスターです。続編が控えるなか、このネオ・ノワールの謎を改めて遊ぶ人にも、初めて追いつく人にも、すばらしい選択肢だと結論づけています。